ベートーヴェン 劇付随音楽「エグモント」



二月半ばの週末金曜日。何気なく音盤棚を見回していたところ、この盤と目が合ったので取り出した。


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ベートーヴェンの劇付随音楽「エグモント」作品84の全曲盤。ハインツ・ボンガルツ(1894-1978)指揮シュターツ・カペレ・ベルリン(SKB)による演奏。ソプラノにエリザベート・ブロイル。1970年ベルリン・イエスキリスト教会での録音。手持ちの盤は2000年前後に、ドイツ・シャルプラッテンの盤がまとめて廉価盤リリースされたときのもの。

エグモントというとその序曲がよく知られている。いかにもベートーヴェンらしい曲想もあって、アマチュアオケもしばしば取り上げるなど、ベートーヴェンの序曲の中でももっともよく演奏される一曲だ。序曲というからには、以降の本編があるはずだというのは学生時代から心得ていたが、実際には滅多に演奏されることがないその全曲を耳にしたのは、この盤が初めてだった。ゲーテの同名の戯曲に付随する音楽として依頼を受けたベートーヴェンが1787年に作曲。オペラ作品ではないが、序曲に続き語りを交えつつ管弦楽とソプラノの歌を織り交ぜて進行する9曲からなる。

 序曲
 第1曲 クレールヒェンの歌「太鼓をうならせよ」
 第2曲 間奏曲 第1番
 第3曲 間奏曲 第2番
 第4曲 クレールヒェンの歌「喜びにあふれ、また悲しみに沈む」
 第5曲 間奏曲 第3番
 第6曲 間奏曲 第4番
 第7曲 クレールヒェンの死
 第8曲 メロドラマ「甘き眠りよ!お前は清き幸福のようにやって来る」
 第9曲 勝利の行進曲

序曲以外の曲がほとんど演奏される機会がない理由はどこにあるのか。9曲の個々の曲にはベートーヴェンの他の楽曲に見られるようなフレーズや和声進行、また美しい旋律もある。しかし「小鉢の単品料理を並べただけ」という雰囲気はまぬがれない。提示し、展開し…というぼくらがベートーヴェンに期待するような構成からは遠い。そのあたりが序曲以外に日の目が当たらない理由だろうか。しかし、ソプラノが歌う第1曲の「太鼓をうならせよ」や第4曲の「喜びにあふれ、また悲しみに沈む」はいずれも美しく、またベートーヴェンらしい明瞭さと活力も感じる。

実はこの盤の魅力の半分以上は、曲よりもハインツ・ボンガルツ&SKBによる演奏にある。ひと昔前の歌劇場たたき上げといっていいボンガルツと、そのボンガルツの解釈を具現化する、当時、まだグローバル化していない時代の東独名門オケによる演奏が聴き物だ。響きは渋く、よくブレンドされ、ボンガルツの指揮には歌劇場出身らしいドライブ感があって好ましい。独シャルプラッテンによるアナログ最盛期の録音も充実している。


アバドとベルリンフィルによる1976年の演奏。クラリネットのカールライスター他当時の懐かしの面々。


この盤の音源。第1曲:クレールヒェンの歌「太鼓をうならせよ」


同 第4曲:クレールヒェンの歌「喜びにあふれ、また悲しみに沈む」


同 お馴染みの序曲



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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