グールド晩年のハイドン



先回の記事に書いたリヒャルト・シュトラウスのピアノ曲で、久々にグールドの例のボックスセットを開けたのだが、その折、晩年の録音が並んだ最後の方にこの盤を見つけたので取り出してみた。


202204_GG_Haydn_1982s.jpg


ハイドンの後期ピアノソナタを収めた盤。グールド(1932-1982)最晩年1982年の録音で、第56・58・59・60・61・62番のソナタがCD2枚に収録されている。グールドは1958年に59番のソナタを録音している

ハイドンといえば、古典的で均整の取れた清廉なイメージを持つが、グールドのこの盤を聴くと番号によって随分と印象が違う。第58番のAndante con espressioneや他の番号の緩除楽章など、これはほとんどロマン派の音楽ではないかと耳を疑うほどの深さだ。テンポは遅く、一音一音に意味がこもる。ゆっくりとしたテンポにより、ノンペダルの音と音の間に空間が作られる。その空間にこちら側のインスピレーションが吸い込まれかのようだ。他方、速い楽章ではもたれず、明快なアーティキュレーションと粒揃いの音で、テンポの緩急に関わらず、一つ一つの音が高い技巧によってコントロールされ、深い譜読と相まって別世界のハイドンを聴かせてくれる。グールドが晩年に古典的均整の取れたハイドンを取り上げ、このような演奏をする意味が何となく分かるような気がする。


この盤の音源。手持ちの盤からアップ。第59番 第1楽章


同 第2楽章



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No title

ハイドンというと交響曲や弦楽四重奏曲に目がいっていましたが、ピアノ・ソナタの面白さに気づかせてくれたのがグールド盤で愛聴盤の一つになっています。
特にアップされている変ホ長調の曲の楽しさは格別でハイドンのピアノ・ソナタというとまずこの曲を選んでしまいます。
近年はブレンデルの演奏も好んでいます。
チェンバロのような小気味よいグールド、ピアノの機能をフルに生かし、それを如実に再現してくれる優秀録音のブレンデル。好対照の二つを家庭で楽しめるのがCDの醍醐味です

Re: No title

パスピエさん お久しぶりです。コメントありがとうございます。
ハイドンのピアノソナタは音数が少な目で、軽快な演奏が似合うように思います。グールドはおっしゃる通り「小気味よい」という表現がぴったりで、ハイドンの魅力を伝えてくれますね。ブレンデルのハイドンは聴いたことがありません。手元に音盤はないので、YouTubeで聴いてみましょう。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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