ジャンドロンのバッハ無伴奏



もう40年前の話だが…
勤め人になって二回目のボーナスでチェロを買い、当地群馬交響楽団のチェロ奏者について習い始めたことがある。学生時代からギターでバッハのチェロ組曲などを弾くことがあって、社会人になったら本物のチェロで弾こうと思っていたのだ。その先生から、スジがいいだの耳がいいだのとおだてられながら三ヶ月ほど通ったが、仕事もあわただしくなってきて通いきれずに終わった。以来それきりで楽器も後年手放した。続けていれば今頃はどこかのアマオケの末席でごまかしごまかし弾いていたかもしれない。再チャレンジ…という気もなくはないのだが、どうしたものだろうと思案しているうちに人生終盤になってしまった…と、そんなことを思い出しつつ、きょうはこんな盤を取り出した。


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モーリス・ジャンドロン(1920-1990)によるバッハ無伴奏。1964年に録音され仏ACCディスク大賞を受賞したという盤だ。この盤は先の先生から薦められた経緯がある。フルニエ、トルトゥリエ、ナヴァラ、ジャンドロンとフランスには名チェリストが多い。ジャンドロンは指揮者としても活躍し、晩年当地群馬交響楽団にも来演。ブラームス交響曲第4番の録音も残している。

ジャンドロンのバッハは一言でいえば楷書の味わいだ。中庸あるいはやや速めのテンポながら丁寧で、音楽全体のバランスがよく過不足ない。バッハ無伴奏チェロはもっとダイナミックで起伏に富んだ表現を狙えばいくらでも出来る曲だろう。またジャンドロンも手元にある小品集では、より自在にテンポを動かし、表現の幅も広げた演奏をしているのだが、バッハの無伴奏に関しては抑制を効かせた折り目正しい曲の運びだ。そんなところがチェロの先生が薦めた理由かもしれない。第1番のサラッとした速めの曲の運び、第2番は深刻にならずに淡々と憂いに満ちた短調の旋律を歌っていく。第6番では華麗なパッセージを苦しげなところもなく一筆書きのように描く。

ヨーヨー・マやロストロポーヴィッチといった名手の演奏も手元にあるが、あまりに流麗、ときに大仰でいささか演出過多に感じて引いてしまう。もっと深遠なバッハ像がほしくなるときもあるが、万事に楷書で中庸をいくジャンドロンのこの演奏は作為的なところがないことが奏功し、淡々と我が道をいく風情でありながら、曲によっては闊達な表情もある。録音もディスク大賞をとるだけあって素晴らしい。残響豊かながら細部も曖昧ならず繊細で美しい音作り。ジャンドロンの特徴をよく引き立てる音作りだ。手持ちの盤は70年代終盤に出ていた廉価盤LP。CDは長らく廃盤だったが、現在はDECCAレーベルになった盤が手軽に入手可能。この曲のファーストチョイスとしてイチオシだ。


フィリップスレーベルのCD盤音源。第1番から始まり、全6曲がリストされている。



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