M・ポンセ「24の前奏曲」
一年前から顕在化した左手人差し指の不調。その後もあまり変化なく、コンディションは日によってかなり異なる。幸い益々悪化という気配でもなく、様子をみながら付き合っている。あまり神経質になっても仕方ないので、弾きたいときは無理しない程度に積極的に弾くようにしている。相変わらず大曲に取り掛かることもなく、古典期のエチュードや小品を中心に、時折り少し目先の変わった小品をつついてばかり。今夜もそんな流れで最近さらっているものの一つとして、こんな楽譜を広げてみた。

TECLA社刊ミゲル・アルカサール編のマヌエル・ポンセ「前奏曲集」。先日の記事に書いたジェフェリ版ソル全集と一緒に取り寄せたもの。ポンセ(1882年-1948)はクラシックギター弾きにはお馴染みの作曲家だが、一般の音楽愛好家には「エストレリータ」で知られる程度かもしれない。
「ギターのための24の前奏曲」は1920年代にパリで作曲され、当初そのうちの12曲だけがショット社版(セゴビア編)として広まった。ぼくら世代には、70年代半ばに音楽之友社から出ていたセゴビア/クラシックアルバムの第10巻でお馴染みだ。その後80年代初頭にポンセと同郷(メキシコ)のミゲル・アルカサールがオリジナルの草稿をベースに、ポンセの当初の意図を反映させた各調から成る24曲として構成出版したという経緯があるようだ。ぼく自身は12曲のセゴビア編は以前から親しんでいたが、全24曲の存在は知ってはいたものの今回、遅まきながらこのアルカサール編を手に入れて初めて実際の楽譜に接した。
この曲集の巻頭には、アルカサール自身によるこの楽譜を出版するに至った経緯等が記されていて興味深い。それによると当初セゴビアが12曲のみを選んで出版した大きな理由に、ギターにおける調性の問題があったようだ。全24調にはギターでは一般的でない調性があり、それらを考慮した結果、24曲のうち12曲が選ばれ、またそれに関連してオリジナルから移調も行われた。特に♭の多い調性は多くのギタリストに馴染みが薄いことから、シャープ系に移調されている。
セゴビア編(ショット版)10番二長調(上)とアルカサール編15番変ニ長調(下)


当初の出版であるショット版は、クラシックギターを広め認知度を上げたい、ポンセの曲を広く知ってもらいたい、そうしたセゴビアの意図を反映させたものとして評価されるべきだろう。同時にこのアルカサール編は、全24調を網羅して一つの作品としてみるというオリジナルの再現として貴重だ。また調性に関わらず、曲はいずれも短いながら機知に富み、ポンセの他の曲でしばしば現れる曲想やリズムの癖もみられて楽しめる。自称中級のギター弾きには格好のテキストだ。
この版による全24曲
全24曲の楽譜付き音源。
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