K・ベーム&VPO ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調「運命」
五月も半ば。せっせと仕事をしている。
本ブログのプロフィル欄に「…中年サラリーマン」とあるが、もはや中年に非ず、立派な老年サラリーマンだ(スミマセンそのうち修正します)。さて、それはともかく…今夜も変わらぬルーチン。先日来の流れにのって、こんな盤を取り出した。

カール・ベーム(1894-1981)とウィーンフィルによるベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調「運命」。1970年から72年にかけてセッション録音されたベートーヴェン交響曲全集中の一枚。手持ちの盤は初出カートンボックス入りLP全集盤で、90年代になってから中古で手に入れた。
1975年のウィーンフィルとの来日で最高潮に達した70年代のベーム人気。それを体験している世代もみな還暦以上になるだろうか。しかし、当のぼくらオーバー還暦世代にとっては、半世紀近く前の出来事ながら、当時の演奏が録音も映像もよい品質で残っているためか、そう昔のこととは感じない。例えば1980年代に半世紀前の戦前を回顧するのとは印象が異なるだろう。晩年、特に日本において異常とも思えるほどの人気を博したベームだが、その録音は賛否両論があった。いわく、ライヴはいいがセッション録音はまったく別人のようで覇気がない、という意見も多かった。このウィーンフィルとのベートーヴェン全集もそういう評価を下されることがある盤だ。
確かに今こうして第5交響曲を聴いていても、手に汗握る切迫感や周囲を圧するように奔放な迫力は感じない。聴こえてくるのは、整然とした響き、堅実なテンポ、安定した音響バランス、そういったいわば楷書の趣きだ。同時に、独墺系の保守本流でありながらウィーンフィルの明るい音色によって、決して地味な印象にはなっていない。ベームは晩年まで耳の良さはまったく衰えなかったそうだが、おそら練習では、あの怖そうな表情で各パートの出音に一音一音注文を付けていたことだろう。その結果がノリとパッションだけで押し通すような演奏の対極に位置する響きを作り出した。歳を取ったから…というわけではないが、こういう楷書のどこが悪いのかと、そう思ってしまう。
録音はカラヤン&ベルリンフィルの多くのセッションでお馴染みのギュンター・ヘルマンスが担当しているが、音の印象はかなり違う。録音場所の違い、オケの違いはもちろん大きいと思うが、それ以上に、各声部の響きを明確にし、音楽の骨格を第一に組み立てるベームの解釈によるところが最大の要因だろう。音楽の横への流れを重視するカラヤンとは対照的だ。全楽章を聴き終えたあとの、どっしりとした充実感はベームならでは。同時期のブラームスの全集と併せて、長く聴き継がれるべき名演だ。
大成功したウィーンフィルとの1975年来日を受け1977年に同団と再来日した際の演奏。第3楽所終盤から全4楽章。
当時81歳のベームはまだまだ元気いっぱい。懐かしいゲルハルト・ヘッツェル(当時37歳)とライナー・キュッヘル(当時27歳)のツートップ。
以下は全4楽章のリンク
https://youtu.be/RXWeZBo3d6E
この盤の音源。全楽章。
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