K・ベーム&VPO ブラームス交響曲第1番ハ短調@1975年来日公演



このところずっとベームの演奏を聴いている。今夜はもっとも印象深く思い出も多いこの盤を取り出した。


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カール・ベーム&ウィーンフィル1975年3月来日時のライブ盤。LP4枚組のセットで、NHKホールでの一連の公演から以下の曲が収めされている。

Side_1/2
ベートーヴェン レオノーレ序曲第3番/交響曲第7番
Side_3/4
シューベルト 交響曲第8番「未完成」
モーツァルト 交響曲第41「ジュピター」
Side_5/6
シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」
Side_7/8
ブラームス 交響曲第1番
ワグナー ニュルンベルクのマイスタージンガー第1幕前奏曲

1975年3月大学1年の春休み。まだステレオセットも持たず、貧弱なラジカセ(当然モノラル)にかじりついて「生中継」を聴いていたことを思い出す。当時ベームとウィーンフィルは人気の絶頂にあった。この公演も大きな話題になり、FMで中継されテレビでも映像が流れた。日頃FMでN響の演奏に親しんでいたぼくにとってこのときの演奏は、これが同じホールで演奏しているオーケストラかと思うほどいつもの音と違っていた。それは貧弱なラジカセで聴いていてもわかるほどで、解説者の大木正興氏(懐かしい!)が番組中で語っていた通りの、明るく艶やかなウィーンフィルの音だった。 この盤は当時の放送録音と同じ音源と思われるが、今こうして聴くと全く作為がなく、かなり乾いた音がする。艶かなオーケストラサウンドというと夢見心地のような音をイメージするかもしれないが、この録音がそうでない。NHKホールのデッドなアコースティックもあって比較的オンマイクで録られた生々しいウィーンフィルの音がリアルによみがえる。

演奏はどの曲もベームのスタジオ録音では聴けない緊張感と熱気にあふれている。ベームが、というよりはウィーンフィルの面々が80歳を過ぎたこの好々爺のために、日本での公演に一発勝負をかけたような気迫を感じる。このときの公演ではコンマスの席にはゲルハルト・ヘッツェル(当時35歳。1992年山歩き中に転落事故で急逝。享年52歳)が座り、隣りのライナー・キュッヘル(当時25歳)共々、ベームの指揮棒を見逃すまい、そして応えようと身を乗り出して弾いていた姿を思い出す。

ブラームスの第1番は中でも熱演だ。冒頭のティンパニと低弦群によるC持続音の序奏からテヌートが目一杯効いたフレージングで音楽にすき間がない。主部はやや遅めのテンポながら音楽は弛緩するところない。曲が始まってしばらくはオケ全体が自分たちの行先を探るような感じがあるが、次第に流れが確定していく。曲の盛り上がりでは独自の音色を持つウィンナホルンが音を割るほどに強奏し、コントラバスはゴーゴーを唸りを立てる。第2楽章のウン・ポコ・ソステヌートも充実した弦楽器群の歌と木管群の渋いソロが美しい。終楽章はそれまでの充実したオケの鳴りが更にランクアップしたかのような響きで圧倒され、特にコーダは一段とヒートアップし大団円となる。

1975年のこの公演のあとベーム&ウィーンフィルは1977年、1980年と来日を重ねた。しかしぼくがテレビの中継で見ていた記憶では、いずれもこの75年来日時の演奏に比べ、曲の運びに締まったところがなく、アンサンブルや音程も怪しいところがあったりと、いいところがなかった。久々に取り出したこのLP。何百回と聴いたブラームスの第1番。ベーム&ウィーンフィルの充実した演奏、青春時代の想い出も入り混じり、しみじみと聴き入った。


この盤の音源。ブラームス交響曲第1番ハ短調。全4楽章。1975年3月17日 ベーム渾身のブラームス。


このときの来日公演初日3月16日に演奏された「君が代」


3月19日に演奏された「ニュルンベルクのマイスタージンガー第1幕前奏曲」



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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