カラヤン&BPOメンデルスゾーン交響曲第3番イ短調「スコットランド」
早いもので五月も下旬。このところ関東地方は走り梅雨を思わせる日と夏の到来を感じさせる日とが交互に訪れている。 さて本日も業務に精励。野暮用もあって少し遅い帰宅となった。ひと息ついて、今夜はこんな盤を取り出した。

ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989)指揮ベルリンフィルハーモニーによるメンデルスゾーン交響曲第3番イ短調「スコットランド」。3枚組の交響曲全集の一枚。1971年ベルリン・イエスキリスト教会での録音。録音技師は例によってギュンター・ヘルマンス。
何とも美しい演奏。イエスキリスト教会の長い残響にカラヤンのレガートでシームレスな歌い口が重なる。カラヤン流のこうした音楽作りは70年代に入ってからの録音で一層際立っているように思う。60年代初期のベートーヴェンやブラームスなどは、ときに荒削りな勢いや生々しさを感じることがよくあるし、BPOの音も重心が低くかつ音色も暗めだ。しかし、このスコッチを聴くとややナローレンジな録音ながら音色はずっと明るく、荒削りなところはまったくない。70年代に入るとカラヤン&BPOはEMIでの録音を再開してチェイコフスキーやワグナーの管弦楽曲集などを出したが、そのEMI盤の音の傾向がこのDG録音にも感じられる。EMI盤はさらに残響たっぷりで音楽も少々やりすぎではないかと思うほどレガートに感じたものだ。おそらくカラヤン自身の意図によって、元々サウンドポリシーの異なるDGとEMIながら、共通点を感じさせる音作りになっていったものと思う。
もちろんこのスコッチは美しさだけでなく、力強さや迫力も申し分ない。アーティキュレーションは理にかなっていて不自然なところはなく演奏としての完成度が高い。がしかし、あえて言おう…面白くないのだ。心踊り血が騒ぐような感興に乏しい。あのマーク&LSO盤のような沸き立つようなザワザワ感がない。あるいは味わいに乏しいといってもいい。おそらくカラヤンだけを聴いていれば、こんなことは思わないかもしれない。しかし馬齢を重ねて様々な個性豊かな指揮者たちの演奏を聴いてくると、あちこち傷のある演奏ながら、そこに他に代えられない雰囲気と味わいを感じる。
こうしてカラヤン&BPOの演奏を聴いていると、今どきの例えとしては不適切だろうが、完璧な美人すぎて面白みや妄想もさしはさむ余地もない、そんな場面を思い浮かべる。もっとも、そうであっても美人見たさに、こうしてときどきカラヤンの演奏を聴きたくなるのも確かなのだが。
この盤の音源。全4楽章。
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