テンシュテット&LPO ワグナー管弦楽曲集
五月もきょうで終わり。四月以降のタイトな業務も幾分改善傾向になってきた。やれやれだ。さて、きょうもいつも通りの一日を終え帰宅。一服してアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。

クラウス・テンシュテット(1926-1998)とロンドンフィルハーモニーによるワグナーアルバム。1992年8月ロンドン・アルバートホールでのライヴ録音。収録曲は以下の通り。お馴染みの曲が並ぶ。
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲
歌劇「リエンツィ」序曲
楽劇「神々の黄昏」-「夜明けとジークフリートのラインへの旅」
楽劇「神々の黄昏」-「ジークフリートの葬送行進曲」
楽劇「ワルキューレ」-「ワルキューレの騎行」
歌劇「タンホイザー」-序曲とヴェーヌスベルクの音楽
テンシュテットがぼくらの目に触れるようになったのは70年代後半になってからだ。それまでの長いキャリアのほとんどを東独で積んでいたため、1971年に西独に亡命するまでは、その存在すら一般の音楽ファンには知られていなかった。西側に出てからテンシュテットの評価は急速に高まった。しかし本格的に西側での活躍を始めてから10年と経たない80年代半ばには癌を発病。以来闘病の合間をぬってレコーディングや日本を含む海外公演を精力的にこなした。録音活動期間が限られていたこともあって数こそ多くはないが、ベルリンフィルやロンドンフィルを指揮したアルバムは、いずれもドイツの伝統を強く感じさせる名演揃いだ。 テンシュテットのワグナーアルバムは、このロンドンフィル盤とベルリンフィル盤とがある。共に甲乙つけがたい演奏だが、ライブならではの熱っぽさ、音響の密度な、そしてやはり団員が「テンシュテットの元では120%の力が出せる」と彼を慕った、このロンドンフィル盤を手にすることが多い。
ぼくはテンシュテットの指揮で初めてリエンツィ序曲に開眼した。それほど彼の演奏するリエンツィ序曲は素晴らしい。序盤のゆっくりとしたテンポとじっくりと腰を据えた展開、ようやく弦楽が主題を奏するところで、もう背筋がゾクッときてしまう。いかにもワグナー的な、寄せては返す曲のうねり、次第次第に盛り上がる息の長いクレシェンド。テンシュテットは聴き手のこちらの早る気分を抑えるように、まさに悠揚迫らず巨大なワグナーの音楽を築いていく。ロンドンフィルもどっしりとした響きで応え申し分ない。終盤、打楽器も混じっての大団円も軽薄なお祭り騒ぎにならない。もちろんマイスタージンガーやタンホイザーも文句なしに素晴らしい。 テンシュテットが亡くなって24年。残されたいくつかの録音は、ドイツ音楽の保守本流の流儀を聴かせてくれる演奏ばかり。まだまだ忘れるわけにはいかないマエストロだ。
手持ちの盤からアップ。「マイスタージンガー前奏曲」
同 「リエンツィ」序曲
1988年来日公演での「リエンツィ」序曲。何度観ても心震える演奏だ。
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