モーリス・ジャンドロン&群馬交響楽団 ブラームス交響曲第4番ホ短調
六月最後の週末。土日とも野暮用少々。あたふたと過ごす。きのうの夕方、少々時間があったので。折からの暑さをエアコンで癒しつつ、先回のモーリス・ジャンドロンが弾くショパン「序奏とポロネーズ」の記事で触れたこの盤を取り出した。

モーリス・ジャンドロン(1920-1990)が当地の群馬交響楽団(群響:グンキョウ)を振ったブラームス交響曲第4番ホ短調。1980年9月録音。レコード帯に大きくデジタル録音とうたわれている。
思えばこの年1980年は群響とその周辺にとって、映画「ここに泉あり」(昭和30年・1955年)以来の画期的な年となった。ヨーロッパで現役バリバリの活躍をしていた豊田耕児を迎えて音作りとアンサンブルを徹底的に叩きなおし、カール・ライスターやジャンドロンとの協演やレコーディング、草津音楽アカデミーの開催等々、それまでにないほどの大きな変化があった年だった。
1980年といえばデジタル録音が一気に主流になりつつある時期でもあった。アナログ期の完成された音に比べ、デジタル録音の個性を強調するがあまり、甲高く痩せた音の録音も散見された時期でもある。しかし井阪絃率いるカメラータトウキョウのデジタル録音は、この群響の録音にも現れているように、そうしたネガティブな要素がない。まるでアナログ期の延長のようによくブレンドされた落ち着きのある音で収録されている。このブラームスは群響の本拠地(当時)群馬音楽センターで収録されたものだが、ホールのデッドな音響特性を反映して豊かな響きこそないが、各パートは明瞭に分離していているし、全体のバランスも良好だ。
実はこの盤を手にするまで指揮者としてのジャンドロンを知らなかった。ジャンドロンはもっぱらチェリストと思っていたが、メンゲルベルクやシェルヘンにも就いていたというから決して余技ではなかったのだろう。この盤でブラームスの交響曲を取り上げ、指揮者ジャンドロンとしての存在を知らしめることにもなった。当時ジャンドロンの弾くバッハ無伴奏チェロ組曲の盤を聴いていたが、その解釈は正統かつ中庸を心得たものだった。このブラームスも時代こそ違うが、バッハ同様オーソドクスな解釈で曲を組み立てている。大見得を切るようなところはないし、フレーズの歌い方もまったく自然だ。弦と管のバランスも、何かが突出するようなところはない。
そんな解釈と初めての指揮者であるジャンドロンと録音に臨んだ群響の硬さもあるのか、前半二つの楽章はいささか精彩を欠く。弦の歌い方は踏み込みが浅く、どこかよそよそしい感じがするし、管の音程も少々あやしいところが散見される。ところが第3楽章に入った辺りで空気が一変。録音セッションで何があったかは不明だが、明らかにオケの響きが違う。弦楽群はフレーズの抑揚が大きくなり、デモーニッシュなスケルツォに相応しい響きになってくる。トッティのフォルテも鋭く重さも加わり、ようやく音楽が動き出す。終楽章のパッサカリアは最もよい仕上がりだ。 この録音から四十年余。現在の群響は当時より数段上手くなっているし、ホールも新しくなった。今となっては「かつての記録」かも知れないが、当時を知る者としては感慨深い記録だ。(当時の群響の録音がまだいくつか現役でリストされている。このジャンドロンとの録音も入手可能だ。)
最近になってYouTubeが自動生成するトピックスに群馬交響楽団が加わったようで、この盤の音源もあった。第1楽章
同 第4楽章
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