セル&クリーヴランド管 ドヴォルザーク交響曲第8番ト長調@1958
先回書いたセル&クリーヴランド管のドヴォルザークの記事でも触れたもう一枚の名盤。今夜はこちらを取り出した。

ドヴォルザークの交響曲第8番ト長調。ジョージ・セル指揮クリーヴランド管による1958年の録音。2枚組のセットで、この8番の他7番と9番「新世界から」、スメタナ「モルダウ」と歌劇「売られた花嫁」から4曲が収録されている。
セルのドヴォ8を言えば、先回の記事に書いた名盤の誉れ高い晩年1970年録音のEMI盤が真っ先に思いつく。ぼくも長らくEMI盤を愛聴していたが、機会があればこの1958年盤を聴いてみたい思っていて、十年程前遅ればせながらこの盤を手に入れた。
練習の厳しさで知られたセルだが、ことドヴォルザークに関しては練習が短く終わったそうだ。セルの母親がボヘミア人でその血を受け継ぎ、理屈ではなく血で演奏するからとの由。即興的なルバートも一番多かったそうだ。クリーヴランドの団員もセルのドヴォルザークを楽しみにしていたと聞く。実はこの盤を手に入れたとき、EMI録音に比べ聴き劣りするのではないかと案じつつプレイボタンを押したのだが、冒頭の主題が出るなり、そんな危惧は一瞬にして吹き飛んだ。
まったく素晴らしい演奏だ。EMI盤に比べると各楽章ともほんの数秒だけ速いテンポだが、聴感上は決して急ぐ気配はない。他のセルの演奏から想定するテンポよりはずっとゆっくりだ。どんなフレーズも丁寧かつ、いと惜しむかのように切々と歌う。相変わらず各パートの分離が明瞭で、耳につく旋律だけでなく第2ヴァイオリンやヴィオラにこんなモチーフが隠されていたのかと驚く。木管やホルンもいつもながら惚れ惚れする上手さだ。
以前この盤をCDプレイヤー2台を切り替えて聴いたことがあった。EMI盤とこの盤をスイッチで切り替えて比べてみると、その音色の違いの大きさに驚く。このソニークラシカル盤(CBS盤)はすべての音が際立って明瞭で、奏者の弓使いや息づかいまで分かるほどリアルな音。一方EMI盤はよく言えば各パートの音がブレンドされ、ホールやや後方の席でゆったり聴く感じだ。一枚ベールがかかった音といってもいい。どちらがこのコンビらしいか、あるいはどちらが魅力的かと問われたら、今ならこのソニークラシカル盤と答えるだろう。そして、それほどリアルな音像を耳元で展開しながら、およそ雑なところがない。各楽章ともこの曲に相応しい美しい歌いっぷりだが、終楽章のコーダなど、ここぞというときの爆発的なエネルギーと疾走感も圧倒的に素晴らしい。
この盤の音源。全4楽章
カラヤン&ベルリンフィル1973年来日時のリハーサル@NHKホール。本番衣装も着ているし、おそらくはコンサート当日のゲネプロ(ドレスリハーサル)だろうか。さっと通して確認という感じのリハだ。カール・ライスター(CL)、ジェイムス・ゴールウェイ(FL)…みな若い。コンマスはミシェル・シュワルベか。ぼくはこのとき浪人生時代。受験勉強そっちのけでNHKFMの生中継に聴き入っていた。
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