ベーム&ウィーンフィル 1975年来日ライヴ


何度か告白しているが、このところじっくり音楽を聴くことが少なくなった。三千枚余の手持ちの盤を隅々まで聴いたわけでもなく、もちろん飽きたわけでもないのだが、棚に目をやり、さて何を聴こうかと思いながら時間だけ過ぎて結局何も聴かずに終わることも多い。何か盤を取り出しジャケットを眺めていると、この曲はあの主題で始まって展開し、あそこでティンパニの決め所があって…といった具合に思いが巡り、何度も聴いたよなと、そこで終わりとなってしまう。これも加齢のためかと半ばあきらめているのだが、ときに気を取り直して聴き始めると、やはりしみじみいい曲だと感じ入って、たっぷり1時間、2時間と聴くことももちろんある。きょうは昼間から頭痛に見舞われたこともあって7時前に帰宅した。夕飯を済ませたあとボーッと音盤の棚を眺め、実に久々にこんな盤を取り出した。


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カール・ベーム&ウィーンフィル1975年来日時のライブ盤LPだ。NHKホールでの一連の公演から以下の曲が収めされている。

Side1/2
ベートーヴェン レオノーレ序曲第3番/交響曲第7番
Side3/4
シューベルト 交響曲第8番<未完成>
モーツァルト 交響曲第41番<ジュピター>
Side5/6
シューベルト 交響曲第9番<ザ・グレート>
Side7/8
ブラームス 交響曲第1番
ワグナー ニュルンベルクのマイスタージンガー第1幕前奏曲

1975年3月大学1年の春休み。まだステレオセットも持たず、貧弱なラジカセ(当然モノラル)にかじりついて『生中継』を聴いていたことを思い出す。当時ベームとウィーンフィルは人気の絶頂にあった。この公演も大きな話題になり、FMで中継されテレビでも映像が流れた。日頃FMでN響の演奏に親しんでいた耳にこのときの演奏は、これが同じホールで演奏しているオーケストラかと思うほど、いつもの音と違っていた。それは貧弱なラジカセで聴いていてもわかるほどで、解説者の大木正興氏(懐かしい!)が番組中で語っていた通りの、明るく艶やかなウィーンフィルの音だった。
この盤は当時の放送録音と同じ音源と思われるが、今こうして聴くと全く作為がなく、かなり乾いた音がする。艶かなオーケストラサウンドというと夢見心地のような音をイメージするかもしれないが、この録音がそうでない。比較的オンマイクで録られた生々しいウィーンフィルの音がリアルによみがえる。
演奏はどの曲もベームのスタジオ録音では聴けない緊張感と熱気にあふれている。ベームが、というよりはウィーンフィルの面々が80歳になろうとしているこの好々爺のために、日本での公演に一発勝負をかけたような気迫を感じる。このときの公演ではコンマスの席にはゲルハルト・ヘッツェル(1992年山歩き中に転落事故で急逝。享年52歳)が座り、隣りのライナー・キュッヘル共々、決して動きの多くないベームの指揮棒を見逃すまい、そして応えようと身を乗り出して弾いていた姿を思い出す。

ブラームスの第1番は中でも熱演だ。冒頭のティンパニと低弦群によるC持続音の序奏からテヌートが目一杯効いたフレージングで、音楽にすき間がない。主部はやや遅めのテンポながら音楽は弛緩するところなく、曲の盛り上がりでは独自の音色を持つウィンナホルンが音を割るほどに強奏する。第2楽章のウン・ポコ・ソステヌートも充実した弦楽器群の歌と木管群の渋いソロが美しい。終楽章はそれまでの充実したオケの鳴りが更にランクアップしたかのような響きで圧倒される。特にコードは一段とヒートアップし大団円となる。
マイスタージンガーや未完成も、このコンビのよき時代の最後を飾るとも言える充実した演奏だ。1975年のこの公演のあとベーム&ウィーンフィルは、1977年・1980年と来日を重ねた。しかしぼくがテレビの中継で見ていた記憶では、いずれもこの75年来日時の演奏に比べ、曲の運びに締まったところがなく、アンサンブルや音程も怪しいところがあったりと、いいところがなかった。久々に取り出したこのLP。何百回と聴いたブラームスの1番。ベーム&ウィーンフィルの充実した演奏に感銘を受け、しみじみと聴き入った次第だ。


1975年のこの公演の成功受け、77年に再来日した際の様子がYouTubeにあったので貼っておこう。まだかくしゃくとし、時折大きく腰を落とすベーム独特のアクションも見られる。



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No title

こんばんは!
私もこの75年の公演をNHKで見て大変感銘を受けました。
これはDVDが出てるんですね。
このころは山本直純のオーケストラがやってきたとか、わかりやすい番組があり、楽しかったです。

Re: No title

たけさん、こんばんは。
ちょこっと、ご無沙汰でしたかね。
私もNHKのテレビ中継を食い入るように見たくちです。演奏に先立って演奏された日本とドイツの国歌。君が代が実にシンフォニックで立派だったこと。そうそう、マイスタージンガーでシンバルが映ったとき、シンバルの端が欠けていたのが印象的でした。古い楽器を大事に使っているんだなあと。

山本直純;オーケストラがやってきた
黛敏郎;題名のない音楽会
立川澄人と鳥飼久美子;NHK世界の音楽

懐かしい番組、よく覚えています。

No title

こんばんは。
75年と77年のDVD買っちゃいました!
本当に懐かしいですね!
与太様のお陰で、DVD発売してるのがわかって嬉しいです。
ありがとうございました!

Re: No title

たけさん、こんばんは。

そうですか、それは楽しみですね。
70年代後半はベームもカラヤンもバーンスタインも、みな健在でした。巨匠最後の時代ってところですね。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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