ブラームス弦楽五重奏曲第2番ト長調
令和5年にちなんだナンバー5。5に引っ掛けて、第5番ではないが、「5」つながりということで、この盤を取り出した。

ブラームスの弦楽「五」重奏曲第2番ト長調作品111。ベルリンフィルメンバーによる1970年の録音。弦楽五重奏の1番と2番がそれぞれA面B面に収められている。手持ちの盤は1979年に<室内楽1300>と称されたフィリップス系廉価盤シリーズ中の一枚。演奏団体名はベルリン八重奏団としてクレジットされて、その中の以下のメンバーが参加している。土屋氏は1959年から2001年までBPO最初の日本人プレイヤーとして在籍。この録音は入団から10年を経った頃のもので、名実共に名門オケのヴィオラ奏者として活躍していた時期の記録となる。
アルフレッド・マレチェック(Vn)
フェルディナンド・メツガー(Vn)
土屋邦雄(Va)
ディートリッヒ・ゲルハルト(Va)
ペーター・シュタイナー(Vc)
ブラームスの五重奏ではクラリネット五重奏曲、ピアノ五重奏曲がまっさきに頭に浮かぶが、管もピアノもない弦楽五重奏曲、取り分けこの第2番もいかにもブラームスらしい渋さに満ちている。加えてこの曲には渋さゆえの難解さがない。全楽章とも穏やかな歌謡性を持ち、親しみ易い。ベートーベン最晩年の室内楽やピアノソナタが、深く瞑想的かつ常人を受け付けないようなところがあるのとは対照的だ。ぼく自身はブラームスの室内楽中、もっとも素晴らしいものの一つと感じる。
第1楽章、冒頭こそ明るいト長調で始まるが、決して陽光さんさんと降り注ぐ明るさではない。穏やかで平和的ながら、ほの暗い落ち着きも併せ持って曲が進む。2本のヴィオラによる響きは中音部が厚く、それでいて同じブラームスのチェロを2本にした弦楽六重奏ほどの重さはなく、程よく重厚で温厚に響く。
第2楽章と第3楽章はそれぞれニ短調、ト短調の短調に転じる。第2楽章はヴィオラの哀愁に満ちた主題で始まり、ヴァイオリンによって変奏されていく。最後に主題が回想され、長調に転じて終止するあたりは本当に美しい。続く第3楽章のレントラー風のメロディーも一度聴いたら忘れないほど印象的なものだ。哀愁に満ちた旋律を各パートが綾を成すように展開される。終楽章はブラームス得意のハンガリー風(ロマ風)のモチーフで始まる。途中、穏やかな副主題をはさみながらも、最後はラプソディックに盛り上がり曲を終える。
ベルリンフィルメンバーによる演奏は、昨今の、よりダイナミックかつアクティブな演奏スタイルに比べるとずっと内省的。1970年というと、ベルリンフィルはカラヤン施政下ですっかり近代的なオケになっていたと思うが、こうして室内楽と聴くと、個々の演奏者のベースにはまだまだひと昔前のスタイルが残っていたのかと実感する。
この盤の音源。第2番第2楽章アダージョ
以下の動画は2013年ヘルシンキ室内楽フェスティバルでの録音とのこと。セルシェル(G)とデュオのアルバムも出しているジャン・ワンがチェロを弾いている。少し調べてみると他のメンバーもみな素晴らしキャリアの持ち主。モダンかつシャープな演奏。当然だがBPOメンバーによる半世紀前の演奏とは印象がまったく異なる。
第2楽章12:12~ 第3楽章18:12~ 第4楽章23:30~
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