名月の宵 バルビローリのマーラー第9番


今夜は十五夜。帰宅して食事を済ませたあと、ひとしきりソファでうたた寝。日付が変わろうかという頃に目が覚めた。外を見ると時折雲に見え隠れしながらも、何年かぶりに月明りがのぞいた。今も昔も太陽は陽で月は陰か。神秘に満ち、妖しく美しい。

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床につく前に少しだけ音楽を聴こうと思い、マーラーの交響曲第9番を取り出した。先日ドヴォルザークの7番で登場した英国の指揮者ジョン・バルビローリと、彼とは少なからぬ縁があるベルリンフィルによる演奏。この盤の録音にまつわる逸話はつとに有名だ。1963年の冬、当時すでにカラヤンの配下になって久しかったベルリンフィルにバルビローリが客演してこの曲を振った。そのときベルリンフィルの団員が同団の支配人に、ぜひこの指揮者のもとでこの曲を録音したいと申し出たという。そして客演から1年後の1964年1月にこの録音が行われた。バルビローリとベルリンフィルの関係は大戦終戦から数年を経た1949年にさかのぼる。以来数十回に渡りバルビローリはベルリンフィルに客演。その都度ベルリンフィルの団員達から絶賛されたという。

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英国の指揮者というと、紳士然として万事に中庸という先入観を持つが、バルビローリはそうではない。ミラノスカラ座でヴァイオリンを弾いていたという彼の父はイタリア人で、母親はフランス人。彼はアングロサクソンではなくラテンの血筋を引いている。実際手元にある彼の盤、特に晩年のブラームスやシベリウス、マーラーやドヴォルザークなどロマン派の作品では、いずれも旋律を明確に歌い、ハーモニーの味付けも濃厚だ。このマーラーもそうした彼の気質がマッチし、素晴らしい演奏を繰り広げる。
長い第1楽章は、どこか煮えきらずためらいがちで、旋律も後ろ髪を引かれるように進む。第2楽章のレントラーも弦のメロディーラインに出てくるアクセントを強調しながらやや重い足取りだ。第3楽章のロンド・ブルレスケでは金管群も加わり音楽は熱を帯びてくる。ここでも要所要所で打ち込むアクセントが印象に残る。そしてこの曲の白眉、終楽章アダージョ。冒頭の弦のトゥッティからベルリンフィル弦楽セクションの深く厚いハーモニーが響き渡る。録音当時の60年代前半、すでにカラヤンの手中にあったベルリンフィルだが、オーケストラとしての実力、機能性な文句なく素晴らしい。弦はもちろん、この曲で重要な役割を果たすホルンやトランペットも全体のバランスを考慮したバランスと音色だ。サー・ジョン・バルビローリとベルリンフィルは70分を越すこの曲を最後まで飽かさずに聴かせてくれる。けだし名演だ。
バルビローリは1970年、大阪万博に合わせ初来日の予定であった。がしかし、その来日公演のためのロンドンでのリハーサル中に急逝。1970年7月29日没。享年70歳だった。

YouTubeに、得意のブルックナーでかなり手厳しくオケを締め上げているリハーサル光景があったので貼っておこう。




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長いこと憧れでした

こんにちは

このレコードは非常に高価で、長いこと欲しいけど買えないレコードの
代表選手でした。
それだけに手にしたときはうれしくてうれしくて仕方ありませんでした。
実際、演奏も、録音もそれだけの価値があると思います。

Re: 長いこと憧れでした

メタボパパさん、こんにちは。
バルビローリとマーラーとの相性はとてもいいですよね。

若い頃はもっぱら廉価盤しか手に出来ませんでしたから、この盤や他のニューフィルハーモニア管との5番・6番なども、80年代に出た国内盤LPを、しかも中古で手に入れた次第です。最近は中古レコード店も探索もしなくなりましたが、国内盤LPは二束三文の扱いですね。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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