ミュンシュ&パリ管 ブラームスの第一
昨日、関東地方は久々の降雪。数センチの雪で大騒ぎする体は、雪国の人からは呆れられるところだが、実際あちこちで交通渋滞、鉄道遅延と、いつもながらの光景だった。そんな中、都内での仕事を終えて夕方の新幹線で帰宅。車中で聴いていた続きで、この盤を取り出した。


シャルルミュンシュ(1891-1968)とパリ管弦楽団によるブラームス交響曲第1番ハ短調。1968年1月の録音。当時の仏文化相アンドレ・マルローの提唱でパリ音楽院管弦楽団から発展的解散を経て創設され、ミュンシュを音楽監督に迎えたパリ管弦楽団創設直後の録音の一つ。この演奏については多くが語られているので、今更付記すべきこともない。久々にこうして聴いてみると、やはり一期一会の名演だ。ライナーノーツで故宇野功芳御大が例の宇野節でこの演奏について熱く語っている通り、この演奏にはフルトヴェングラーのステレオ録音かくやと思わせるところがある。
第1楽章冒頭の序奏からして並々ならぬ重量感と堂々たる威容に圧倒される。フルトヴェングラー&BPOのDG盤1952年録音の序奏を彷彿とさせる。序奏の終盤、木管のフレーズを受けてチェロが寂寥感に満ちた下降音形を奏でるところがあるが、ここでそれまでの力感あふれる運びから一転して抑え気味にこのフレーズをチェロに弾かせ、力ばかりでないこの曲の成り立ちを象徴的に表現する。主部も遅めに始まるが、じわじわとテンポを上げていく。全体に響きのトーンは重心低くドイツ的。コントラバスがゴーゴーと唸るような音を立て、金管やティンパニーが要所要所の決め所で強烈なくさびを打ち込む。第2、33楽章ではパリ管木管群の響きが冴え渡る。そして終楽章で音楽はますます即興的になり、より熱を帯びてくる。周到な練習を経て、合わせることに注力する演奏の対極といってもよい。第1楽章以上に低弦群が強調され、ティンパニーの強打にも一層力が入る。そして一気になだれこむコーダ。手持ちのこの曲の盤は二十指に及ぶと思うが、その中でももっとも熱い大団円だ。チェリビダッケやヴァントのような緻密で周到に仕組まれた演奏もいいが、ときにこのミュンシュ盤のラプソディックで熱っぽい演奏も聴きたくなる。これほど劇的な演奏を繰り広げたミュンシュだったが、この録音から十ヶ月後、パリ管との演奏旅行中、1968年11月に77歳で急逝した。
この盤の音源。全4楽章
第2~4楽章。1966年ORTF(フランス国立放送管)との来日公演。
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