クレンペラー&バレンボイムのベートーヴェン



二月も下旬。寒暖繰り返しながら次第に春の気配。年度末締め切りの業務が中々タイトで、ここに及んで冷や汗続きの自転車操業が続いている。この歳になって何だかなあという感じだが、まあ完全リタイアするまでは仕方ない。勤め人の宿命だ。さて、今更の愚痴はおいておくとして…今夜の「盤ご飯」はこれ。数年ぶりに取り出した。


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ダニエル・バレンボイム(1942-)がオットー・クレンペラー(1885-1973)と組んで録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集。1967~68年録音。手持ちの盤はクレンペラー&(ニュー)フィルハーモニア管による同じベートーヴェンの交響曲全曲とパッケージされたもの。ピアノ協奏曲全5曲と合唱が入る作品80の幻想曲、交響曲の方は全9曲の他、序曲が数曲と大フーガ(作品133のアレンジ)が収録されている。2000年頃、EMIのボックスセットが大量に出たときのもの。以前あった隣り町のタワーレコードのワゴンセールで買い求めた。今夜は第3番ハ短調を取り出して聴いている。

ピアノ協奏曲だからピアノが主役なのだろうが、その前にまずクレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管の奏でるオケパートに耳がひきつけられる。対向配置のオケの響きはおそろしく透明で、大編成にも関わらず音の混濁がまったくない。左右に配された第1、第2ヴァイオリンの掛け合い、左奥から意味深く響くコントラバス、それらにのって明瞭な木管群が適度な距離感で中央奥に広がる。過剰なエコーがのらないEMIアビー・ロード第1スタジオでのセッションの様子が目に浮かぶようだ。

クレンペラーの解釈は遅めのテンポではあるが、オケの音響が清涼であるがゆえに鈍重さはない。またフォルテも余裕を残して響かせるためか、うるささを感じない。第3番が始まってバレンボイムのソロが出てくるまでのオケの序奏だけで完全に脱帽ものの素晴らしさだ。録音当時まだ二十代のバレンボイムはクレンペラーの指示だろうか、ほとんどインテンポを崩さず楷書の趣き。音色も透明感に満ちている。巷間の評価でものちの再(再々)録音よりも、このクレンペラーとの録音を推す向きが多いのもうなづける。録音当時すでに巨匠の域だったクレンペラー。そしてその胸を借りて、若いながら落ち着いた弾きぶりのバレンボイム。ピアノだけ考えるとおそらくもっと達者な弾き手はいるだろうが、それを補って余りあるオケパートの素晴らしさが光る名演だ。十分現役の録音状態共々、今もってこの曲の代表的録音といっていいだろう。


手持ちの盤からアップした。ピアノ協奏曲第3番ハ短調・第1楽章


第3番ハ短調。手兵シュターツカペレベルリンを弾き振りするバレンボイム。2005年バレンボイム65歳の誕生日の演奏。
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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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