ローラ・ボベスコ  クライスラー名曲集

昨夜聴いた五嶋みどりのヴァイオリンでふと思い立ち、続けて女性奏者のヴァイオリンを聴いてみるとするか。今夜はぐっと趣きと変えて、ローラ・ボベスコに登場してもらおう。1971年生まれの五嶋みどりからさかのぼること半世紀、1921年生まれのボベスコは、2003年に亡くなるまで長いキャリアを持つ。きっとぼくの世代よりも上のオールドファンが沢山いることだろう。ブロンドで美貌のヴァイオリニストとしても知られ、還暦を過ぎた頃の来日時の写真を見ても往時の美しさを十分残している。手元にある彼女の二つの盤のうち、昨夜の五嶋みどりの盤と収録曲も重なるクライスラー名曲集を選んでみた。1984/85年の録音だ。

ローラ・ボベスコ クライスラー名曲集

第1曲『愛の喜び』が始まってすぐ、その音色に耳を奪われる。特に中音域から低音にかけて豊かで、深く、そして濃い。時折り音程の甘さが気になるところがないではないが、それよりも音色の魅力が勝る。昨夜の五嶋みどりとは対極といってもよいほどだ。少々ゲスな表現を許してもらえるなら、二十歳の小娘と大人の女の懐深さの違いとでも言おうか。ぼくのお気に入りの『ウィーン小行進曲』も収録されていて、五嶋みどりと比べると面白い。ボベスコの演奏はテンポが二段階くらい遅く、一つ一つの音がたっぷりとしている。低弦のビブラートの揺れに、聴く側の心まで揺さぶられそうだ。がしかし、表現としては過度なところはなく、音楽の品格が高い。ゆったりしたテンポ、豊かな音でよく歌うが、妙なコブシや嫌味なテンポルバートはなくて音楽が自然に流れていき、どこまでもチャーミングだ。懐は深いが、厚化粧の大アネゴではない。

ぼくのレコード棚にある女性ヴァイオリン奏者の盤を思い起こしてみた。ローラ・ボベスコ、イダ・ヘンデル、ジネット・ヌヴー、ミシェル・オークレール、チョン・キョン・ファ、ナージャ・ソネンバーグ、ヴィクトリア・ムローヴァ、前橋汀子、潮田益子、五嶋みどり、諏訪内晶子、庄司紗矢香などの盤があるはずだ。美しきミューズ達の他の名盤もいずれ取り上げよう。え?川井郁子?高島ちさ子?…手元にありません。コンチェルトきちんと弾かないヴァイオリニストは、ねえ…

YouTubeをあたったら、還暦を少し過ぎた頃のボベスコの演奏があったので貼っておこう。堂々と、しかし気負わず自然体でブラームスのコンチェルトを弾いている。


関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

No title

「ボベスコ クライスラー」で検索してやって来ました。

ボベスコのクライスラーは聴く者を穏やかな気持ちにして幸福感で包んでくれるような演奏ですね。上で書いておられると通り、音程が少しずれたのではないかと思われるところもありますが、それさえも味わいの一つと納得させられてしまいます。

耳で聴く音楽ではなく、心で感じる音楽といったところでしょうか。

最初はニコニコ動画で聴いたのですが、アマゾンで注文して毎日聴いています。

これからも、ブログ内を徘徊させていただきにやってきます。当方、50代後半のオジサンですが、よろしくお願いいたします。

Re: No title

Dorjiさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
ボベスコのファンとのこと。取り上げた盤は晩年の演奏ということもあって味わい深いという言葉が相応しい演奏で気に入ってます。彼女ような存在を受け継ぐ、現代の女流は誰なんでしょうかね…
私も五十代半ば、いや最近一つ年を取ったので五十代終盤かな。これを期にどうぞ宜しくお願いします。

No title

ご返事、有難うございます。

上の記事の日本人女性ヴァイオリニストの中に渡辺玲子さんの名前がありませんが実演、CDともにお聴きになっておられないのでしょうか。

五嶋みどりさんの「11才のニューヨークデビュー」「タングルウッドの奇跡」、諏訪内晶子さんの○税、□×△本の出版(涙)のように華がない為か、あまり話題になることの少ない方ですが、大変な実力者だと思います。
残念ながらyou tubeにもupされていませんし、ニコニコ動画には賞味期限の切れたような動画が一つ挙がっているだけです。

実演は何年も前に一度拝見しただけですが、とりわけ右手の弓さばきにスゴイモノを感じました。

公式サイトを貼っておきますので、よろしければ一度覗いてみてください。試聴できます。

http://www.reikowatanabe.com/index.html



Re: No title

Dorjiさん、こんばんは。
渡辺玲子さんはCDは持ち合わせていませんが、当地群馬交響楽団との協演で二度ステージで聴いています。一度目はもう10年ほど前、ヴェイルの<ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲>という珍しい曲でした。耳慣れない曲だったので記憶にありませんが、前評判通りの技巧派という印象派残っています。二度目も記憶定かでありませんが、ショスタコービッチかバルトークだったように思います。昨年夏にも当地へ来演し、ブリテンの協奏曲を演奏しています。意図的か偶然か分かりませんが、当地では近現代の作品を取り上げています。現在NY在住ということなので、CDセールスやメディアへの露出とはまったく別次元で、活躍されているものと思っています。

No title

二回もお聴きになりました。それは大変失礼致しました。


私は今年の夏に無伴奏の曲ばかりのリサイタルを聴きましたが、男性的な演奏をする方との印象を持ちました。

確かに、cdに録音されている曲もベルク、ショスタコの協奏曲やエルンストなどの無伴奏がありますので、お書きになっておられるように現代モノ、テクニック重視の曲が多いようですね。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)