ギュンター・ヴァント&NDR響のブラームス
年齢が進むと何事も加齢のせいにしてしまう。以前はマイナーな秘曲・珍曲の類いにも興味をもったものだが、最近はそうした気力も失せ、名曲全集に出て来そうな曲ばかり聴いている。これも加齢のなせるわざか…。さて、黄金週間後半の週末土曜日。きょうも幾度となく聴き返してきた曲を選び、この盤を取り出した。

ギュンター・ヴァント指揮NDR響(北ドイツ放送交響楽団、現NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)によるブラームス交響曲集。1995年から97年にかけ、NDR響の本拠地ハンブルグ:ムジークハレで録られている。今夜はそのうち第1番をプレイヤーにセットし、第2楽章から聴いている。
演奏あれこれの前にこのヴァント盤、録音がいい。「録音がいい」ではあまりに漠然としているが、ここで言う録音の良さとはオーケストラの響きの捉え方のことだ。ヨーロッパのコンサートホールに響く管弦楽は正にこういう響きだろうと想像できる録音。すべての音が程よい距離感をもって柔らかく溶け合い、それでいて各パートの音は明瞭だ。チェロ・バスの深い響きの上にヴァイオリン群が広がりをもって展開する。その奥から木管がブレンドされて聴こえてくる。広々としたホールの空間に柔らかなホルンが響く。
ヴァント(1912-2002)は晩年になってもテンポが遅くならなかった数少ない指揮者といわれる。この録音当時80代半ばだったが、テンポは決してもたれず、ビートがしっかり刻まれている。特に第2楽章のような緩徐楽章でもはっきりとテンポ感を保っている。第1楽章冒頭の序奏などは思いのほか速いテンポ設定でグイグイと進み、主部に入るとギアチェンジして腰の据わったテンポ設定となる。
一方、響きのコントロールという点では各パートが明確に分離している。一聴すると響きが薄いようにさえ感じるほどだ。その結果、音楽はこの上なく精緻で身の引き締まるような緊張感に満ち、その緊張感がオケ全体の響きとホールトーンの中で心地よく解放される。こういう演奏と録音を聴いていると、決してボリュームを上げなくても、再生音楽としてのオーケストラ演奏を充分楽しめることが分かる。
この盤の音源。全4楽章。
この盤の一年あと1997年のNDR響とのライヴ。ヴァント85歳のとき。
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