コルトレーン「Ballads」



今週始めに冷たい雨が降ったあと天気は一転。きのうから夏を思わせる暑さに見舞われている。しばらく忘れていた灼熱の日々を思い起こしながらも、クールダウンに今夜はジャズ。この盤を取り出した。


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サックスのジョン・コルトレーン(1926-1967)によるバラードアルバム。その名も「バラード」と題された一枚。1962年リリース。手持ちの盤は90年代初め頃、御茶ノ水の中古レコード店で手に入れた国内盤。コルトレーンがマイルス・デイヴィスのバンドから離れ、ピアノのマッコイ・ターナー、ベースのジミー・ギャリソン、ドラムスのエリヴィン・ジョーンズと自前のバンドを組んだ頃のものだ。コルトレーンというと火の出るような圧倒的なプレイを想像するが、このアルバム、そして前後して録音された歌手ジョニー・ハートマンと組んだアルバムでは彼の美しくジャズスピリットあふれるバラードプレイが楽しめる。収録曲は以下の通り。

1.Say It
2.You Don't Know What Love Is
3.Too Young to Go Steady
4.All or Nothing at All
5.I Wish I Knew
6.What's New
7.It's Easy to Remember
8.Nancy

第1曲の<Say It>の出だしから彼の深く伸びのあるトーンに打ちのめされる。ひとフレーズ吹いたあとに、マッコイ・ターナーが控えめながらインスピレーションに満ちたピアノを付ける。コルトレーンがややハイトーンを使ったフレーズで戻ってきて、曲は少し緊張するが、すぐにまたリラックスしたテーマを回顧して曲を閉じる。第3曲<Too Young To Go Steady>では、コルトレーンとマッコイ・タナーが寄り添うように美しいテーマを歌い上げ、途中からエルヴィン・ジョーンスがごく軽くスウィングして曲が動き出す。どの曲も型通りのバラードプレイであるが、まったく過不足ない。

よく引き合いに出される逸話では、当時彼のマウスピースが不調で急速なパッセージが吹きづらかったため、プロデューサーがちょうどいいから大衆受けするバラードのアルバムを作ろうとコルトレーンに持ちかけたという話がある。しかしコルトレーンがそれだけの安直な理由で2枚の傑作バラード集を作ったとも思えない。もしかするとマウスピースの不調は、甘いバラードを吹くための照れ隠しに彼が作った言い訳だったかもしれない。


この盤の全曲。30分間のリラックスタイムを約束してくれる。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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