マリオ・ジョアン・ピリス「ショパン後期作品集」



月があらたまって令和五年水無月六月。ぼちぼち梅雨入りの便りも届く頃。関東地方ではこれからが田植えのシーズン。あちこちの用水路は水かさを増している。さて、週半ばの木曜日。少し湿った空気を感じながら夜半の音盤タイム。久しぶりにこの盤を取り出した。


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マリオ・ジョアン・ピリス(1944-)の弾くショパンの後期作品集。2008年録音の2枚組。収録曲は以下の通り。

ディスク1
ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58
2つの夜想曲 作品62 夜想曲 第17番 ロ長調 作品62の1
2つの夜想曲 作品62 夜想曲 第18番 ホ長調 作品62の2
3つのマズルカ 作品59 マズルカ 第36番 イ短調 作品59の1
3つのマズルカ 作品59 マズルカ 第37番 変イ長調 作品59の2
3つのマズルカ 作品59 マズルカ 第38番 嬰ヘ短調 作品59の3

ディスク2
1. ポロネーズ 第7番 変イ長調 作品61≪幻想≫
3つのマズルカ 作品63 マズルカ 第39番 ロ長調 作品63の1
3つのマズルカ 作品63 マズルカ 第40番 ヘ短調 作品63の2
3つのマズルカ 作品63 マズルカ 第41番 嬰ハ短調 作品63の3
3つのワルツ 作品64 ワルツ 第6番 変ニ長調 作品64の1「小犬」
3つのワルツ 作品64 ワルツ 第7番 嬰ハ短調 作品64の2
3つのワルツ 作品64 ワルツ 第8番 変イ長調 作品64の3
マズルカ 第45番 ト短調 作品67の2
マズルカ 第47番 イ短調 作品67の4
チェロとピアノのためのソナタ ト短調 作品65
マズルカ 第51番 ヘ短調 作品68の4

ショパンは1810年に生まれ、1849年に39歳で亡くなっている。この盤にはその晩年1844年以降の作品がほぼ網羅されている。この頃ショパンは体調を崩し、父を失い、ジョルジュ・サンドとの別れもあった。まさに失意の晩年だったろう。若い頃はショパンに対して<女学生が甘ったるい小説を小脇に抱えながら聴く音楽>といった、いささか偏見めいた印象もあって、積極的に聴くことはなかった。しかし近年、特に後期作品やマズルカなどを頻繁に聴くようになり、その良さを実感するようになった。滅多に新譜には飛びつかないが、この盤は発売されてまもなく出会い、迷わずレジに持っていた。

ピリスは抑え気味の抑揚で、静かにショパン晩年の心情をなぞるように弾いている。オーディオの音量をやや控え目にして聴くとより味わい深く響く。<子犬のワルツ>もピアノ発表会聴くような陽気にパラパラと弾く様には遠い。マズルカは沈み込んだ音調がいっそう聴く側の心を打つ。
チェロソナタはショパンの多くのピアノ独奏曲にはない渋い曲想の佳曲。晩年の作品あるいはショパンの作品とは思えない起伏と力に満ちたフレーズもときにあるが、しかし底流には心折れるような悲痛でメランコリックな曲想が流れる。この盤ではパヴェル・ゴムジャコフという1975年ロシア生まれのチェリストが弾いていて、やや暗めの音色でよくこの曲のイメージをつかんでいる。



この盤のプロモーションビデオ。ショパンの晩年作品について語り、弾くピリス。


この盤の音源 マズルカ第40番ヘ短調 作品63の2


同 マズルカ第51番ヘ短調 作品68の4


同 チェロソナタ 全3楽章



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ピリス、いいですね!

ピリスは好きな演奏家の一人です。この盤もいいですね🎵

Re: ピリス、いいですね!

ピリス…お気に入りなんですね! この盤は晩年のショパンにフォーカスした選曲が秀逸。名盤だと思います。

ピリス 私も好きです

好きなピアニストの1人です。ショパンも素晴らしいですが、デユメイとのコンビで弾いているフランクのバイオリンソナタなども曲の良さを伝えてくれる名演かと思ってます。

Re: ピリス 私も好きです

河内の木樵さん> こんばんは。そうですか、ピリス… やはりファンが多いのですね。デュメイとのフランクも機会があれば聴いてみます。その後、田邊サントスの調子はいかがですか。また様子をお聞かせ下さい。

田邊サントス その後

入手後 どんどん弾いてます。初めて発表会で人前で弾きましたが(演奏はイマイチなものの)楽器は好評で何人かからなんと言う楽器?と演奏後に尋ねられました。弾いている人の感覚以上に音が前へ出ているようで聞いていてとても良く音が綺麗に伝わってきたとの評でした。
単身赴任なのでオンラインで大阪の先生からレッスンを受けているのですが、オンラインでも音が変わったことがすぐにわかったようで、クリアな発音で音圧ある楽器だねと言われました。楽器変えても聞いている人にはわからないことが殆どなのでちょっと驚きですが、自分のタッチにもあっていて非常に良い器に巡り逢えたと思ってます。このブログがひとつのきっかけでもあり、与太さんに感謝です。

Re: 田邊サントス その後

そうですか、それは素晴らしい! 田邊サントスと河内の木樵さん、それぞれの個性がピタリとミートしたのですね。特に聴き手からそうしたレスポンスがあるということは、客観的で間違いのない評価ということで、より嬉しくなるでしょうね。 私の田邊ロマニも以前mixiの集まりで弾いた際、演奏後に何人かから「音がよく通っていた。低音、高音とも素晴らしい音色。」といった声をかけられたことがあります。また他の人に弾いてもらい、自分が聴き手に回ったこともありますが、そのときも自分の予想以上によく聴こえてきて驚きました。 今後も折に触れ、近況をお知らせください。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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