現代ギター誌を読む_#3_1967年6月号



クラシックギター専門誌「現代ギター」のバックナンバー紐解くシリーズ。きょうはその三回目。通巻第3号を取上げる。


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1967年6月号の表紙を飾るのは、スペインのギタリスト:ホセ・ルイス・ゴンザレス(1932-1998)だ。折から1967年5~6月に来日し、いくつかのコンサート開いている。本誌コンサートガイドによると、6月15日の日比谷公会堂でのプログラムとして、お馴染みのラモーのメヌエット、アルベニスやグラナドスなど加え、バリオスの大聖堂が記されている。おそらくバリオスが日本に紹介されたもっとも早い時期のものではないかと思う。前後してドイツのギタリスト:ジークフリート・ベーレント(1933-1990)も来日している。当時、ベーレントの評価は非常に高かったようで、本誌でもその一端をフルート・ブロックフレーテ奏者:大島典雄氏が語っている。それによるとベーレントは、ギター音楽に留まらない広範な音楽の知識と素養を持っていて、当時人気を博していた世の多くのギタリストとは一線を画す存在であったようだ。タレガを断じて弾かず、「禁じられた遊び」を頑固にロマンツァと呼んでいたという。普遍的で伝統的なクラシック全般に精通して、多くのアンサンブル、楽譜校正・出版に関わった、おそらく当時としては稀有なギタリストであったことがうかがえる。


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中南米音楽にページが割かれているのも、この当時の特徴だろうか。本号ではフラメンコで活躍した勝田保世氏が「フォルクローレ談話」として、世界各地の民族音楽と西洋クラシック音楽の関係に一稿を設けている。また濱田滋郎(1935-2021)がアタウアルパ・ユパンキを紹介し、中南米で旺盛な活動をしていた中林淳真がペルーで出会ったファン・ブリートをいうギタリストを紹介している。中林氏の記事によれば、ファン・ブリートはペルー国立音楽院のギター科教授でバッハを得意とし、4年制のそのギター科ではアグアド・ソル・コストなどの教材により正統的かつ厳格レッスンをしていたそうだ。日本の当時のクラシックギターが置かれた状況と比べると、ペルーにギター科をもつ音楽院があり、正統的なクラシックギター教程があったことは驚きだ。


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創刊号から続いている銘器紹介では、カルカッシ教則本で有名な溝淵浩五郎氏所有のエンリケ・ガルシア1907年作が取り上げられている。トルナボス付きの個体でその効果は…低音に対する音質の影響は大きく、第6弦はトルナボス特有の幽玄な音をもっている…と記されている。創刊号のハウザー1世、第2号のアントニオ・デ・トーレス、そして本号のエンリケ・ガルシア、いずれも現在でも名器としてもっとも上位に位置付けられるギターだ。 また本号以降シリーズ化される柄多勇四郎氏による「ナイロン弦の研究」が始まっている。本号では第1回としてナイロン弦物性の概説として、弦振動の考え方・弦の緊張度・音色と弾きやすさといった項が示されている。前後して広告欄に「話題の弦OMEGAついに登場」と記された柄多勇四郎氏が代表を務める「計測研究所」という団体の広告が記載されている。その辺りのことは次号以降探っていきたい。


ジークフリート・ベーレント 80年代初頭来日時のものと思われる。


ホセ・ルイス・ゴンザレス 80年代半ばのもの



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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