現代ギター誌を読む_#4_1967年7~9月号



半世紀以上の歴史をもつクラシックギター専門誌「現代ギター」を紐解くシリーズ。先回までの続きとして、1967年7月号から三ヶ月分をまとめて振り返る。


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当時のギターブームそしてクラシックギター専門誌という背景を受け、4月の創刊以降、事業は順調だったようで、半年を待たずにページ数は創刊号の60ページから80ページ程に増えている。執筆陣にも山根銀二、角倉一郎とクラシック音楽界の重鎮が新たに加わり、啓蒙的な記事を書いている。おそらく現代では少々教条的に過ぎると言われそうな内容だが、当時のこの雑誌の意気込みが繁栄されたものだろう。


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6月号から始まった柄多勇四郎氏による「ナイロン弦の研究」では、時間経過による弦の伸びを測定し、その特性と音色、また実際の張替えや安定に至るプロセスでの留意点を詳説している。単位時間当たりの伸びが大=軟質の弦、伸びの小=硬質の弦とし、前者の例としてオーガスチン、後者の例としてサバレスが挙げられている。音質もそうした物理特性を反映して、柔らかい音質のオーガスチン、硬めのサバレスという評価をしている。当時と比べて遥かに研究が進み、商品種類が豊富になった現代の視点でみれば、より多角的な評価が可能だろうが、当時としては中々力の入った考察だ。ちなみに広告欄にはオーガスチン、ラ・ベラ、コンセルティステ、サバレスなどの弦が見られる。また国産弦として、その後糸巻の世界的メーカーとなった当地群馬の後藤ガット製Percona弦の名もあって懐かしい。


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創刊号以来、紙面に登場している日本人ギタリストとしては松田二郎(松田晃演1933- 2021)が筆頭で、もっとも高い評価と期待の寄せられた存在だったようだ。また、当時まだ二十歳前の渡辺範彦(1947-2004)が佐藤豊彦(その後リュートに専念1943-)とジョイントリサイタルと開き、その後のソロ活動への第一歩を踏み出している。 ギターを含む室内楽に積極的に取り組んでいた石月一匡(1933-2003)の活躍もこの頃目立っている。石月氏は古典派全般の室内楽に通じ、その領域の作編曲にも力を注いだ。クラシックギター弾きといいながら、実はクラシカルな古典音楽、もっと具体的にいえば18世紀末から19世紀初頭のウィーン古典派に通じている人はプロアマ共に多くない。紙面でも「ギターの室内楽とその演奏」と題した連載を載せていて、他の楽器や弦楽合奏との合わせものレパートリーや演奏上の留意点など、今読んでも大いに示唆に富む内容になっている。


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創刊以来続いている銘器紹介では、パノルモ1843年、アントニオ・デ・トーレス1862年、ディオニシオ・グラシア・ヌニエス1953年が登場している。このヌニエスはアタウアルパ・ユパンキの愛器であったものを、この時期に出会いその後ユパンキの弟子となるソンコ・マージュ(荒川義男1935-)が譲り受けたもの。横裏板にアルミ材を使っているのが珍しい。また、「現代の名工」として創刊第2号の中出阪蔵に続き、加納実(加納木鳴1895-1972)が登場し、高橋功、中野二郎を交えて当時のギター製作事情を話している。ギター文化に縁の深い名古屋地区において、子息加納丈夫(加納木魂1939-)のその後の活躍共々記憶に残る製作家の一人だった。


石月一匡作曲のソナタ。古典様式そのもの。氏は室内楽でも同系統の曲を残している。


ソンコマージュの今 2023年2月



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