G・セル&クリーヴランド管 東京ライヴ1970



きょうは乱雑になっていた音盤棚を整理。見た目は整然としたが、整理をする度に過去の置き場所の記憶がリセットされ、ますます探し出すのに苦労するという悪循環におちいっている。どうしたものか…。さて、きょうは整理の途中で目に留まったこの盤を取り出した。過去、何度か記事に書いたことがあったが、あらためて聴くのは本当に久しぶりだ。


202401_Szell_Tokyo.jpg


高度成長まっしぐらの昭和45年(1970)。この年、大阪万博に合わせて多くの海外オーケストラが来日した。5月に来日したジョージ・セル(1897-1970)指揮クリーヴランド管弦楽団もその中の一つだった。それまでセルと同団のレコードがEPICというクラシックの世界では必ずしもメジャーとは言いがたいレーベルから出ていたこともあって、彼らの日本での評価は世間的人気を得るものではなく、一部の好事家以外にはカラヤンやバーンスタインの人気の方が高かった。ところが最初で最後となったセル&クリーヴランドの来日公演はそうした世評を覆す素晴らしいもので、以降伝説的に語られることになった。それから30年経った2000年春。その伝説の日本公演がCD化された。手持ちの盤はそのとき手に入れたもの。以降も高音質盤を含め再発を繰り返している。収録曲は上記の通り。1970年5月22日東京文化会館での演目が2枚組CDにすべて収録されている。

ウェーバー  オベロン序曲
モーツァルト 交響曲第40番ト短調
シベリウス  交響曲第2番ニ長調
<アンコール>
ベルリオーズ ハンガリー行進曲

盛大な拍手に続いてウェーバーの「オベロン序曲」が静かに始まる。録音やホールの特性もあるのだろうが、弦楽器群の透明な響きに驚く。序奏最後のトゥッティでの一撃もピタリを決め、快速調の主部に入る。速めのテンポと一糸乱れぬアンサンブル、透明感あふれる音色、堅固で筋肉質の低弦群の響き。ウェーバーの曲の良さもあってドイツ管弦楽曲を聴く楽しみここに極まれりという感じだ。

続くモーツァルトがまた素晴らしい。あまりに有名になり過ぎ、いささか手垢にまみれた感があるこのト短調のシンフォニーが、セルの演奏で聴くとそうした世俗的な殻が取り去られ、この曲の持つ本質的な骨格ともいうべき部分が明確に見えてくる。第1楽章の展開部、高音群と低音群の半音階的掛け合いや微妙な転調が続く部分など、一時代あとのロマン派の曲想をもイメージさせるような意味深さが手に取るようにわかる演奏だ。昨今のモーツァルト演奏とは違い大編成による演奏だが、響きが引き締まっているので肥大化した鈍重さは皆無だ。

当日休憩をはさんで演奏されたと思われるシベリウスがセル&クリーブランドの特性にマッチするだろうということは容易に想像できる。響きの透明感は言うに及ばず、短いフレーズの中でのクレッシェンドやディクレッシェンド、くさびを打つように入ってくる金管や打楽器のアンサンブルなど、オケの機能が完璧にコントロールされている。合わせて終楽章などは楽章全体を大きくつかんで盛り上げていく曲の運びも申し分ない。

盛大な拍手に続けてアンコールが演奏される。しかも圧倒的なクライマックスのシベリウスの直後、高らかに鳴り響くトランペットで始まるハンガリー行進曲。ハンガリーはセルの生まれ故郷でもある。これほどのアンコールピースはないだろう。曲の終盤ではセルが強烈なアチェルランドをかけ激しくオケをドライブする。会場の興奮もピークに達したに違いない。最後の和音が鳴り終るやいなや会場からブラーヴォの嵐となる。

1970年5月高校1年だったぼくは、ちょうどクラシックに興味を持ち始めていた頃だった。あれから半世紀。そしてこの盤のジャケットに写っている着物姿の少女も今は還暦前後になっているだろう。今どこで何をしているのか…。初めての来日で名演を残したジョージ・セルは帰国後まもなく1970年7月30日に急逝した。オーディオセットから流れる素晴らしい演奏を聴き終えたあと、様々に思いをはせる盤だ。


■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村


この盤の音源。ウェーバー「オベロン序曲」


同 モーツァルト交響曲第1番ホ短調 全4楽章



■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

CDとして出たことに感謝したい録音

1970年5月、私はまだ高校生でした。NHK-FMで流れた演奏会をモノラルの7"オープンリールで録音し、大事にしていました。カセットにダビングし、MDにもダビングしましたが、すでに媒体として役に立ちません。この録音がCDとして残されたことに感謝したいです。とくにシベリウスの2番。4楽章の高揚感にしびれました。当時から半世紀以上を過ぎて、偽名で末期がんに向き合う元過激派の「本名で死にたい」報道、どんな人生だったのか。

Re: CDとして出たことに感謝したい録音

narkejp さん> この演奏に実体験の記憶があるのですね。素晴らしい! 私は高校生になったばかりで、まだクラシック開眼前夜でした。本当によくぞCD化しくれましたよね。他公演日のベートーヴェン「英雄」も素晴らしかったと語り草になっていますが、どこかにテープが眠っていないでしょうか…
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

カレンダー
03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)