カラヤン ラスト・コンサート1988年東京 ベートーヴェン・ムソルグスキー
水曜日のきょうは三時過ぎから来客があり、所用終了後夕方から勤務先近くの店で会食となった。9時前に帰宅。心身共に弛緩のひととき。実はあす文化の日から週末にかけて四連休なのだ。勤め人生活も残り数マイルというこの歳になって、いささかおとな気なくナンだが、小声でバンザ~イ!と叫んでしまった。そして休日前の晩、何か聴こうかと棚を見回し、取り出したのがこの盤だ。


カラヤン最後の来日となった1988年の公演から、5月4日東京文化会館でのライヴが収められた盤だ。この88年の来日公演は4月29・30日の大阪ザ・シンフォニーホールを皮切りに、この盤の東京文化会館での公演を挟んで、5月2日・5日にサントリーホールで行われた。以前の記事で5月5日のライヴ盤を取り上げたことがあった。この盤5月4日のプログラムは、ベートーヴェンの交響曲第4番とムソルグスキー;組曲「展覧会の絵」。ジャケットの帯にはラスト・コンサートと書かれているが、中川右介氏の本によれば、カラヤンはこのあといくつかの公演をし、ロンドンでの公演が真のラスト・コンサートとなったそうだ。
それにしても、やはりこれは最晩年の演奏だ。ベートーヴェンの4番が始まってすぐに、その感を強くした。50年代のフィルハーモニア管との演奏や、ベルリンフィルとの60年代・70年代の演奏も手元にあるが、それらと比べ、これがあの颯爽としたカラヤンか思わせるほどテンポは遅く、一音一音に重心がのり、悠然と音楽が進む。しかし重苦しいわけではなく、むしろ表情は淡々あるいは悠然としている。これをもって晩年の境地を言えば、そういうものかと合点する。
「展覧会の絵」もしかりだ。かつて70年代の彼であれば、オーケストラの機能性を最大限に駆使し、聴く者を圧倒するような表現をとっていただろう。しかしこの盤の演奏にはそうした気配を感じない。もちろん名手揃いのベルリンフィルにぬかりはないし、響きに余裕もある。しかしその余裕で他を圧しようとはせず、曲は最後まで悠然と進む。これをもって、手ぬるいだの凡庸だのと言う向きもあるだろう。しかし音楽としては至極真っ当であるし、何の過不足もない。つまりはそれがカラヤンだったのだと、そう感じる演奏だ。とかく対比されるチェリビダッケ晩年の「展覧会の絵」は聴き手に最大限の緊張を強い、そして最後の圧倒的なカタルシスをもたらす。そうした演奏とは別の種類のものだとあらためて実感した演奏だ。
この盤の演奏当日NHKFM中継の音源があったので貼っておこう。CDには入っていないアナウンサーのナレーションなどもあって懐かしい。
こちらは晩年のカラヤンを追ったドキュメンタリーの一部。生涯たった一度だけ振った1987年ニューイヤーコンサートでの姿もある。
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