ジャーマン・リュート
先日、旧友Y氏からジャーマン・リュート(ドイチェ・ラウテ)を借りてきた。リュートギターとも称されるこの楽器。洋梨を半分に切ったような胴のラウンド形状から、一見ルネサンスやバロック時代の使われた古楽器リュートかと思うが、実は別物の楽器だ。
詳細は古楽器奏者;竹内太郎さんのHPにあるハウザー1世作のジャーマン・リュートの項を参照されたい。ごくかいつまんで言えば、16~18世紀に隆盛したリュート属のマンドーラがリュートが歴史から消えていく中、ドイツ圏で生き残り、それが19世紀後半以降ジャーマン・リュートとしてドイツ圏で大いに持てはやされたということらしい。さらにはこの系譜が北欧に伝わってスウェーディッシュ・リュートなどが生まれたとも言われる。
今回借用したこのジャーマン・リュートは、旧友Y氏が最近海外オークションe-bayで3本同時に落札したものの中の1本で、胴の割れ等があったものを彼自身がリペアしたものだ。総じて状態はよく、楽器として実戦使用可能だ。20世紀前半まではドイツ国内で広まっていて、ワンダーフォーゲル運動で山々を歌いながら歩くグループの中には、こうしたジャーマン・リュートを下げて歌伴を受け持つ若者のいたことだろう。まさにサウンド・オブ・ミュージックの世界だ。旧友Y氏によれば、この楽器も多分1950年代前後のものではないかとのこと。






弦長62cmほどの単弦6弦で調律もギターを同じ。ネックや指板の感じは19世紀のギターに近い。但しネックと胴は通常のギターが12フレットで接しているところが、ジャーマン・リュートでは9フレットでつながっている。また胴がラウンドしているので、現代のギターのように足台を使って太ももに載せようとすると、すべってうまく抱えられない。本体にはエンドピンが付いているので、これを利用してストラップで肩がけにするのが適当だ。19世紀後半から20世紀初頭にかけてドイツを代表する楽器だったということを象徴するかのように、ロゼッタ部には、ドイツの権化とのいうべきワグナーの肖像を模したカメオが付いている。
音の印象も伝統的なリュートというよりは、ほとんど19世紀時代のギターに近いと感じた。胴がラウンド型であること以外の要素は、弦長、弦の張力、胴や表板の材質など当時のギターに近いので、音もそれに似た傾向になるのだろう。音量やサステインは現代のギターに比べると控えめだが、コロコロとしたどこか懐かしく古風な音色だ。多弦のジャーマン・リュートのために編纂されたブルーガー編のバッハはもちろん、バロックや19世紀古典期の作品にはよく合う。あるいはワンダーフォーゲルよろしく、歌伴用にコードをかき鳴らすにも不都合はない。
Y氏によればオークションでの落札価格は思いのほか安価だった由。古楽器リュートと違って世界的にはもう需要もなく忘れ去られた楽器なのだろう。こうして日本の片田舎でポロポロと弾かれて、ジャーマン・リュートもさぞや驚いていることだろう。
こんな感じだ。
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