ラックスマンのアンプ L-570
久しぶりにオーディオ用アンプを新調した。
新調といっても20年物の中古品。オーディオ老舗;ラックスマンのL-570という機種で、その道の好事家なら型番を聞いただけで「あれネ」と合点する品物だ。バブル最盛期の1989年に同社プリメインアンプのフラグシップ機として発売され、純A級動作とハイグレードな部品を使ったモデルとして評価が高かった。以下、好事家向けのカタログ表記を並べると、
…パワーアンプ部はピュアA級動作、大容量電源トランス搭載、信号切替には窒素ガス封入金接点リレーの使用、配線材は要所にPC-OCC材を投入、MC/MMカートリッジ用アンプをそれぞれ専用化して独立搭載、MCアンプではスーパーローノイズ・ハイゲインFETをパラレル使用しイコライザーアンプもA級動作、ガラスエポキシ金メッキ基板に非磁性体抵抗を一個一個マウントしダイキャスト押し出し材によるシールドケースなどで構成した32接点ロータリースイッチ型アッテネーター、純銅のフィンを採用したハイエフィシェンシー・ラジエーターを新たに開発・採用…
とまあ、こんな具合だ。オーディオマニアでない方には『南極探検隊も使用!』くらいスゴいと言ったらいいだろうか(アッ違うか)。今でも中古市場では人気があるようで、ときどき見かけてもすぐに売約済みとなる。今回はたまたま都内販売店の通販サイトでメーカー整備済みの個体が相場価格より少し安く出ていたので、ポチってしまった。


このアンプの特徴は出力段が純A級動作であることに尽きる。電気系技術者のなれの果てとして、一応このあたりの説明は可能だが、いささか長くなるので省略。一言でいうと同じ音量を出すのに一般のアンプの何倍も電気を食うという、今どきの時流には反する技術が使われている。例えれば内部に300ワットの電熱コンロを抱いているような機械で、発熱も半端な量ではない。アンプの上にフライパンを置けば半熟の目玉焼きくらいは出来るだろう。部品や部材も効率よりは音質優先で物量が投入されていて重量は30kgに及ぶ。一方、大飯食らいの見返りとして、その音質は折り紙つきだ。いわくウォームでメローなラックストーンというわけだ。週末にゆっくりと思っていたが、はやる気持ちに抗しきれず本日開陳。さっそく音出しとなった。


20年前の製品で中古品しか流通していないモデルを今更四の五の言っても仕方ないだろうが、音は文句なく素晴らしい。外観も予想以上にきれいで目立ったキズや汚れもない。これはいい買い物だった。イタリアンバロックの弦楽合奏は極めて滑らかに響くし、インバル&フランクフルト放響のマーラー第5交響曲冒頭のトランペットがホールに響く空間表現も素晴らしい。山田穣が吹くサックスもリアルに吹き上がる。中古品とはいえ、憧れの女、もとい憧れの名作アンプを手に入れた心理的バイアスは相当あるし、ブログの記事として少々誇張気味書いた方が愉快だろうという作為もあるにはあるが、話半分とみてもらうにしても余りあるいい音だ。
加えてこのアンプは音量調節ボリュームの操作感が抜群だ。昨今のアンプは音量調節がリモコン対応になり、ボリューム本体の後ろに駆動用モータが付属するようになった。そのためボリューム回転軸にあそび多く、相当な高級アンプでもグニャっとした何とも頼りない感触になってしまった。その点90年代初頭までのアンプのボリュームはリジットで気持ちがいい。それにそもそもこのL-570は従来型のボリュームではなく、固定抵抗を多数並べるという手の込んだ作りのもので電気的にも機械的にも信頼性が高く、安定した操作感が得られる。
レコードやCDである程度真剣に音楽を聴こうという者にとって、オーディセットは楽器弾きにおける楽器と同等の位置付け。金に物言わせて買い込むもよし、思い入れのある道具を大切にメンテナンスしながら使うものよし、B級路線で自虐的に楽しむもよしだ。発売時の何分の一かの価格ではあったが、虎の子のへそくりで久々に新調したアンプ。このL-570で音楽の真髄を聴き取るべく、きっちり音盤と向き合っていこう。
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