Chappell(チャペル/シャペル)社のギター


とある事情で美しい女性、もといギターが手元にある。19世紀半ばのチャペル社の楽器だ。チャペル社は200年の歴史を持つロンドンの楽器店で、現在もボンド・ストリートに店を構えている。このギターは1811年に開業したチャペル社が当時フランスにおける弦楽器の里ミルクールで作り英国で輸入していたもの。当時英国では大変なギターブームであった由。以前記事に書いたラミー社の楽器も英国のアーチャー商会向けのギターだった。


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ご覧の通り、サウンドホールと表板パーフリング周辺、そしてブリッジにも美しく精緻な螺鈿細工が施されている。表板はスプルースで、150年を経たにもかかわらず割れやクラックは見られない。横・裏板は真性ハカランダ材。裏板は2枚が中央ではぎ合わせれている現代のギターと違って1枚板。さすがにここには大きなクラックの修復跡がある。ネックやヒール部分もハカランダ材が巻かれている。白く見えるパーフリングの材料はクジラの髭。当時まだプラスチックは存在しない。糸巻きは英ベイカー社製のもので、使い心地は今も快調だ。

音はこれまで弾いたことのある19世紀ギターの中では最も素晴らしいものの一つだ。低音は胴鳴りを伴って深く響き、現在張ってあるガット弦から出る高音は反応よく立ち上がる。ガット弦に爪先が触れたときに出るカサッという音が、そのあとの弦の振動による本来の音と一体化し、味わいのある音となる。弦高がかなり低くセットしてあるので、モダンギターのタッチではところどころビリ付きが生じるが、やや古楽器風のタッチを意識して弾くと、素晴らしく古風で味わいのある楽音を奏でてくれる。こうした楽器で古典期のカルリやジュリアーニ、ソル、そして初期ロマン派風のメルツなどを弾いていると、その後100年以上を経た現代のギターは随分と無骨で野卑で、力ずくで弾く楽器になってしまったものだと痛感する。

チャペルのギターではないが、19世紀ギターの雰囲気をどうぞ。



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No title

こんばんは、michaelです。
またすばらしい楽器をお持ちですね!装飾もじつに雅といいますか。
19世紀はモダンギターが置き去りにしてしまった楽器の音が残っているようで好きです。長くリュートをやっていると、このように小指を表面板に置く態勢でしか弾けなくなります^^;
最近はリュートを弾く時間もままならないので、うちのミルクールは正式に嫁がせようと思っています、ギター弾きさんが弾くといい音で鳴るんですね;適度に爪を使った音のほうがいいです。

No title

素晴らしい文化遺産ですね!

Re: No title

michaelさん、こんばんは。
19世紀ギターのレプリカを手にしたのは2003年。その後あまり弾かず、もう手放そうかと思っていた頃、たまたまmixiで旧友と再会。それがきっかけで再び19世紀ギターを弾き始めました。遠い存在と思っていたオリジナルも、意外に手軽に手にすることが出来ました。
ガット弦を張った19世紀ギターとモダンはまったく別の楽器ですね。リュートタッチを目指しているわけではないのですが、自然とそんな手の構えになってきます。

Re: No title

たけさん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
19世紀当時、相当数のギターが欧州に存在していたと思われます。最初はレプリカしか手に出来ないだろうと思っていましたが、よい仲介者もいて、意外にも当時のオリジナルが入手出来ました。当初思っていたほど値段も高くありません。150年の時間を買うと思えば、中級量産ギター1本分の値段は安いと見るべきかもしれません。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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