デイヴィッド・ホワイトマン作 ハウザー1世1940年モデル


ちょっと久しぶりに楽器ネタ。英国在住のデイヴィッド・ホワイトマン作のギターを紹介したい。
このギターについてはかなり前に英豪系ギターの弾き比べの機会があった際に一度記事に書いた。その後、諸事情あって拙宅に長期滞在中だ。 ホワイトマンはギター製作の他、地元ロンドンの大学にある製作コースで教鞭を取ったり、トーレスやハウザーを始め18世紀にまでさかのぼる様々な楽器の修理や修復をするなど、英国内外で第一級の製作家として知られている。1965年生まれというから現在47歳。まさに脂ののった時期を迎えている。寡作なこともあって日本にはほとんど入ってきていないし、楽器商社との輸入契約もしていない様子だ。実際ぼくもこの10年ほどでホワイトマンのギターに遭遇したのは都内の楽器店で一度だけだ。

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この楽器は2009年に英国内のある展示会に合せて製作したもので、ハウザー1世がもっともよい楽器を作っていたとされる時期の1940年作のギターを徹底的に研究し、その成果を盛り込んで作られた。表板はドイル松、横裏板は見事なブラジリアンローズウッド(ハカランダ)、パーフリングにはメイプルをあしらっている。ハウザー1世モデルとあって、のちの2世の後期や3世など、ぼくらがイメージするハウザーとはコンセプトが異なる。ひと言で言えば60年代後半以降のハウザーに比べ重量は軽く、低音のウルフトーンは低めに設定され、1世が範としたというサントス・エルナンデスなどのやや古い時代のスパニッシュの味わいを感じさせる音作りだ。
低音、特に6弦のローポジションはF#辺りに設定されたウルフトーンを伴ってたっぷりと響き。高音も軽めのボディーのためか極めて反応よく立ち上がる。近年のハウザーような音のネバリや太さよりは、反応の良さと音の拡散性を強く感じる。低音の鳴り方は、手元にある田邊雅啓作ロマニリョスモデルにも通じるが、高音は田邊ロマニがより端整ですっきりとしているのに対し、ホワイトマンのこのハウザーモデルは少し色気を伴ったというか艶やかに響き、のちの2世・3世時代のネバリにつながるものも感じる。
ハウザーモデルらしくやや小型のボディーサイズで弦の張りも強くないので、演奏性はすこぶる良い。現在やや弱めのテンションの弦を張ってあるが、ゆったりとした低音の上に反応のいい高音がのり、バロックから古典期辺りまでの曲を弾くとまことに気持ちがいい。ここ数年でハウザー1世モデルと称するギターをいくつかみた。ゲルハルト・オルディゲス、フリッツ・オベール等いずれも甲乙つけがたい素晴らしい楽器だった。このホワイトマンのハウザーモデルもそれらに勝るとも劣らない名器だ。

このギターに関してホワイトマンにメールをしたところ、以下の返信があった。彼もこの楽器は気に入っている様子で、表板は特別によいものだったが、彼のレギュラーモデルにはやや小さかったので、やや小型ボディーのこのハウザーモデルに使ったと記している。

Dear ****
Its very nice to hear from you, please accept my apologies for not having replied sooner.
I am delighted you are pleased with the guitar. it is an instrument that I was very pleased with so I am thrilled it has gone to a good home. I would imagine that 19th centaury music would work very well indeed on this guitar. I originally build this guitar with the intention of keeping it, but I find that I just never have enough time to practise, which is rather frustrating. The soundboard is a really fabulous one, but wasn't quite big enough for my stand concert guitar, which is why I used it on this guitar. Right from the beginning it was resonant and musical when you tapped it - I wish all my sound boards were like that one!
Just for your information, the soundboard is European spruce, the back and ribs are Brazilian rosewood and the bindings are birds eye maple. The tuners are Sloane/Waverly. if there is anything further I can tell you about the guitar please let me know.

Yes it would great to keep in touch - And I'll try and reply to emails quicker!

Regards
David

ホワイトマンのHP
http://www.whitemanguitars.co.uk/
彼のブログには、製作やリペアの様子が綴られていて興味深い
http://whitemanguitars.blogspot.jp/
HPにある仕様表。このページにのっているハウザーモデルの写真がきょう紹介した楽器そのものである。
http://www.whitemanguitars.co.uk/specifications.html


プロモーションビデオとでもいうものか。工房での様子が紹介されている。




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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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