ムローヴァ バッハ 無伴奏パルティータ全曲


きのう久々にムローヴァのブラームスを聴き、そういえばと思い出して、きょうは彼女のバッハを取り出した。無伴奏パルティータ3曲を収めた盤で1992年から93年にかけて録音されている。この盤のあと当然のように無伴奏ソナタの盤が出るだろうと思っていたが一向に録音されなかった。ムローヴァはその後ガーディナーやアーノンクールら古楽領域の演奏家と交流するうちに、次第にモダンスタイルから離れて、ピリオドスタイルのバッハを演奏するようになった。そして2007年にいたってようやくバッハ無伴奏作品の全曲を1750年製のガダニーニとバロック弓を使って録音することになる。手元のこの盤フィリップス盤はそうしたスタイルに移行する前の、モダンスタイルの彼女のバッハ演奏ということになる。


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そうはいってもこうして聴くと随所にその後のピリオドスタイルへの萌芽を感じさせる。ヴィブラートは控え目で、フレーズの終わりのロングトーンなどはほとんどノンヴィブラートでスーッと音を伸ばしてフレーズを閉じている。弓への圧力も控えめなのか、音を太くたくましく鳴らすようなところがなく、極めて美しい音がややゆっくりめのテンポでよどみなく繰り出される。その結果、正確な音程と共に清涼感あふれる音楽が続く。眉間にしわを寄せて深遠なバッハにひたるバッハ演奏ではない。それでは清涼感だけのBGMかといえば、もちろんそうではない。ムローヴァの組み立てる音楽の骨格や個々のフレーズやアーティキュレーションの扱いが明確で聴く側にしっかり伝わってくる。そのために決して薄味の印象にはならないのだ。こうしてあらためてムローヴァの優れたバッハ演奏に接すると、その後十数年を経て2007~08年に再録された録音を聴いてみたくなる。


シャコンヌ1999年の演奏。



ムローヴァは近年様々なジャンルの音楽にも取り組んでいる。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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