デイヴィッド・ホワイトマン作 Newコンセプトモデル


ロンドン在住のギター製作家;デイヴィッド・ホワイトマンについては、以前彼のハウザー1世モデルの記事を書いた。そのハウザーモデルは1940年前後の1世の新作もかくやと思わせる出来栄えで、60年代半ば以降のハウザーとは異なる、よりスパニッシュな色合いを持つ楽器だった。 きょうはそのホワイトマンが今年になって完成させた楽器を紹介する。この楽器は今年2012年春に完成。元々米国のギター専門店へ納品予定だったが、訳あってぼくのところへダイレクトにやって来て現在も滞在している。


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昨今、ノーメックスシートをサンドイッチしたダブルトップにワッフル状(格子状)力木構造、強固な横裏板、更にレイズドフィンガーといった時流のコンセプトを盛り込んだギターは、その音量の大きさからプロのステージ用楽器とし重宝されている。
この楽器はホワイトマンが作る通常のラインナップとは異なるもので、最近流行のそうしたコンセプトを一部取り入れて作られている。写真にある彼自身のスケッチ通り、スプルース表板の力木に一部格子状構造を取り入れている。表板そのものは通常のギター同様の単板で特別薄くはないとのこと。横・裏板のうち横板はラミレス3世のようにシープレスの薄板を張り合わせている。また裏板はアーチ型ではないが構造をより堅固にするためだろうか、縦方向に2本の力木が走っているのが特徴的だ。パーフリングとヘッドには茶色のベースに斑点があるスネークウッドをあしらっている。ネックの仕込みは通常の角度、ブリッジもいたってノーマルな仕様だ。糸巻きには簡素な見かけながらリジットな使い心地のルブナー製が使われている。塗装はセラックの鏡面仕上げで、ぼくが今まで見たギターの中で最も美しいものの一つだ。

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ホワイトマンのHPのある、このギターの製作途中の日記から。
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肝心の音はどうだろう。
昨今の新コンセプトのギターは大音量が得られる一方で、音色に魅力がない、音色の変化が付けにくい、音量の割りに音が通らない、耐久性に乏しいといったネガティブな意見も散見される。このホワイトマンのギターはひと言でいえば、その構造通り伝統と革新がうまく調和し、伝統的なギターが持つ音色の魅力を保ちながら新コンセプト導入による音量拡大を実現しているといえる。音量だけなら以前弾いたサイモンマーティーに軍配が上がるだろうが、音量と音色を指先のタッチで制御して音楽を作っていく道具としては、マーティーは中々じゃじゃ馬で一朝一夕にはコントロールできない(この点が以前サイモンマーティーの入手を見合わせたポイントでもある)。その点このホワイトマンは明るく反応のよい音でタッチの強弱にもリニアに追従するのでコントロールしやすい。絶対的な音量はサイモンマーティーやスモールマンには及ばないものの、音に芯がありサステインも長く浸透力があるように感じる。弦のテンションはそう強い感じはしないし軽いタッチにもよく反応する。

中高音の音色は明るく、ちょっとマリンなどグラナダ系のギターを思わせる。低音のウルフトーンは目立たずG#あたりからFまでほぼ均等の音量感で、音色としてはドーンあるいはボーンではなく、芯のあるビーンに近い。弦高を通常よりも低くセットしてあるにも関わらず(6弦12フレットの弦~フレット間で3.5mm)、低音弦でビリつきはなく、弦の振動がうまく制御され有効にエネルギー変換されているのではないかと推察する。あえて難点をあげつらうとすれば、音全体に落ち着きとか深みといった要素があまり感じられない。またセラックの鏡面仕上げが美しい反面、ちょっとした扱いでくもりや荒れが出やすいことくらいだろうか。音の落ち着きや深みは作り出す音楽で実現すればいいし、デリケートなセラック塗装の状態が気になるなら時折メンテナンスすれば美しい鏡面はよみがえる。いずれも欠点というには当らないないだろう。また良く通る明るい音色と十分な音量は他の楽器とのアンサンブルで武器になりそうだ。そういえば最近の日本人プロギタリストの中にでも、ソロにはハウザーやロマニリョス系譜の楽器を使いながら、アンサンブルではより浸透力と音量感のある時流の楽器(レイズドフィンガーの桜井RFモデル等)を使う人も多いと聞く。まあ四の五の言って自宅で一人弾いていても音の評価は定まらない。いずれどこかでお披露目演奏したいと思っている。


きょう紹介した楽器と同時期に作られていたハウザーモデル



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No title

こんはんは。またお邪魔します。

興味深い写真ですね。表板の裏の力木ですが、確かに格子状になってますが横の3本を
のぞけば、ごく普通のファン・ブレーシングなんですね。それだけの違いでも音は
変わるものなのでしょうか。微妙なものですね。

Re: No title

hsさん、おはようございます。
コメントありがとうございます。

少し前に書いた記事http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-487.htmlの写真で、河野賢1999年遺作の表板の構造の写真をのせましたが、やはり伝統的な扇状とは随分違っています。また現在の桜井ギターのPCモデルなどは、このホワイトマンに近く、扇状のベースに加えて横方向に何本か入っています。こちら⇒http://www.jump.co.jp/bs-i/chojin/archive/126.htmlのページで下から二つ目の写真を見るとよく分かります。ブレーシングは微妙ながら、やはり音を支配する重要要素のようですね。

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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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