オーガスチン弦の怪?!


本日はギター愛好家限定の話。それも少々込み入った話になる。
知らなかったのは、この私だけか…

◆ 黒・赤・青の高音弦はまったく同じもの
ギター用ナイロン弦の元祖;オーガスチン社の弦には古くから黒・赤・青のパッケージがあり、この順番でテンションが強くなる…というところまでは70年代からの共通認識であったと思うが、実はこの3種類の高音弦はまったく同じもの。テンションの違いはそれぞれの低音弦の違いだということに1年ほど前に気付いた。このことを話すと多くのギター弾きから「えっ?そうなの」と言われる。


black.jpg red.jpg blue.jpg


最近オーガスチン弦の黒・赤・青はダダリオ社プロアルテ弦の様なパッケージに変り、裏面には弦のゲージが記されている。高音弦の数字は3種類とも同じ。販売店でのバラ売り価格も同じ。同社のHPによれば、この3種に使われている高音弦は<Classic>と称し、ローテンションだと記されている。その上のテンションに<Imperial>があり、さらにその上に<Reagal>があるとも書かれている。一方低音弦には<Black><Red><Blue><Gold>がある。この低音弦<Black><Red><Blue>が高音弦<Classic>と組み合わされてお馴染みの3つのパッケージが出来上がっている。これは最近になってそうなったのか、昔からそうなのかはよく分からない。

高音弦の仕様
http://albertaugustine.com/trebles.html
低音弦の仕様
http://albertaugustine.com/basses.html

◆ 不良弦が多いと言われるが…
また不良弦と多いと言われるオーガスチンの高音弦だが、その理由は「音質重視のため、古いデュポンの成型機を使い続け、音程を整えるための研磨を一切していないからだ」とAria創業者;荒井史郎著「ギターに魅せられて」に書かれている。しかし、最近のオーガスチン高音弦をみるといくらか乳白色に見えて、完全なクリアナイロンとは違うように感じる。もしかすると音程確保の研磨工程が入っているのではないかと思ってしまう。それにそもそも弦自体の音程不良より、押弦時の力の入れ具合による音程の変動の方がずっと大きいと感じていて、私自身は音程に関してオーガスチンの高音弦を気にせずに使っている。中でも低音がほどよいテンションで鳴りもよい<赤>が私のお気に入りだ。


◆ 結局どうなのよ
この話、オーガスチン弦の黒・赤・青パッケージの高音弦は<Classic>という名のローテンション仕様でみな同じという件について決着をつけるべく、オーガスチン社のサポート宛にメールで問合せたところ早速返信があった。問い合わせた内容は「以前は黒・赤・青の高音弦はそれぞれ別物だったように記憶しとるが、いつから変ったんじゃい?」「ナイロンがやや乳白色に見えるが、以前はクリアで透明だったんちゃう?」という2点。以下がオ社からの返信だ。

Dear Maestro YOTA
Thank you for your message. No, the Classic trebles have always been the same. We merely added the information you saw online so that we might help our customers avoid confusion.
Also, we have not changed the Classic nylon formula, and yes, it is a bit milky. If you would like a crystal clear Augustine String, I suggest you try our Regal and Imperial trebles, coupled with your favorite Augustine basses!
Warm regards,
Stephen

…昔から同じだヨン。みんなが混乱しないようにサイトに追記したまでよ。仕様も変っていないヨン。クリアがよけりゃ、リーガルかインペリアル買ってチョ。…まあ、そんな内容だ。ちなみに国内ディーラー元締めの荒井貿易にも問い合わせてみた。以下が荒井貿易からの返信。

マエストロ与太様
お問い合わせいただきましてありがとうございます。
オーガスチン黒・赤・青の高音弦ですが、基本的に同じ物です。(リーガルはまた別です。)
これは以前からそうなのですが、オーガスチンがRED1弦などバラ弦もカラー別にパッケージを用意している事から別物という認識がされている場合が多いのが現状です。(当社も一時期まで別物という認識を持っていた時期もございました。)  色に関しましては、製造方法に関しては変更されておりませんので材料の微妙な変化だと思われます。ご参考になりましたら幸いです。

…基本的には同じ物です…<基本的には>少し前からよく使う常套句だが、じゃ<応用的には>どうなのよと突っ込みたくなるなあ。いずれにしても荒井貿易も気付かないで別物として扱っていたということがはっきりした。仕様についてもよくわかっていない様子。
そんなこととはつゆ知らず、長い間、大方の愛好家は黒・赤・青の高音弦は別物と思っていて、雑誌のコメントでもそれらしい表現があったり、我々もその違いを実感するような感覚を抱いてきた。クラシックギターの弦の評価に関してはオーディオ評論に近い、かなり怪しい世界のように思うことしきりだ。


◆ 更なる疑惑
その後同社のパッケージを見ていてまたぞろ疑問が出てきた。本当だとしたらかなりショッキングなので小声で言おう。実はオーガスチン高音弦<Classic>はダダリオ社プロアルテ弦のノーマルと同じではないだろうかと疑い始めている。そう思い始めている根拠は以下の3点。


R0012756 (480x480) string_A_Pro (480x480) R0012771 (480x480)


(1)パッケージが酷似
以前オーガスティンのセット弦パッケージは透明ビニール製の袋に入っていた。ところが1年程前からプロアルテのエコパッケージのような紙製の袋に入っている。しかもその形状、外形・切り欠き形状などがそっくりなのだ。但しパッケージの中の1本1本弦の包装は異なる。

(2)ゲージが酷似
プロアルテは以前からパッケージにゲージを表記している。一方オーガスチン弦はついこの間までゲージ表示をしていなかったが、(1)の紙パッケージになってから表示を始めた。インチ表示において小数第3位を四捨五入するとまったく同じ表記になる。

(3)弦の見た目が酷似
手持ちのデジカメで二つの会社の3弦を接写してみた。左からプロアルテ・オーガスチン、そして参考用にハナバッハの3弦を並べた。ハナバッハが完全なクリアナイロンなのに対して、プロアルテとオーガスチンはやや乳白色が混ざっていて、その度合いもほどんど区別できない。


以上3点。もちろんいくらでも異論は出るのは承知だ。以前に記事にも書いた通り、オーガスチン社は弦の仕様は昔から変えていないというのだが、どうもクサい。売れ筋の廉価ノーマル弦に限ってプロアルテとオーガスチンは共通仕様でコストダウンを図っているのではないかと。 もちろん音が違うという意見が山ほど出てくるだろう。品質が均一な楽器(例えば河野ギターやヤマハ辺り)を2本用意して、同時比較出来ればその判定も可能だろうが、オーディオのブラインドテスト同様、音の記憶に頼る判定は中々難しいと思う。
さて、あまりに単純な疑いか、ひょっとするとひょっとするのか…


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ギターの弦は

おじゃまします。弦の考察(疑惑?)楽しく読ませていただきました。

弦の材料となるポリアミドの線状素材の生産はおそらく世界中で2、3社じゃないかと
思います。日本のT社が細々と生産しているのは何かで読みました。かつて大昔に
オーガスティンはデュポンの原材料を成形加工していたかも知れませんが、何らかの
理由によって(商売上の?)ダダリオと手を組んだ、ないしは同じ輸入元から仕入れを
始めたのではないか?と疑えますね。ダダリオが成形加工後の研磨を独自にやっていると
すれば、2社がつるんだ可能性が高いでしょうかね。もっとも同じオーガスティンでも
インペリアルとリーガルはまた別系統かも知れない。

ともあれ、ギター弦(特に高音3本)の音の違いは楽器の違いに比べれば、微々たるもの。しかしそうは言っても微妙に艶っぽく感じられるインペリアルの愛好者です。

Re: ギターの弦は

hsさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

おっしゃる通りですね。高音ナイロン弦の製造メーカーは限られています。サバレスのフロロカーボン弦は呉羽化学であることを公言しています。元々釣り糸の流用でしょうから。低音弦のフィラメントも同様だと思います。私もゲージの太さによる違いは明確に分かりますが、それ以外は…

リーガルとインペリアルは完全に透明なクリアナイロンです。両者の違いはゲージだけのようです。私もやや細めのインペリアルはしなやかで好きな弦ですね。

昔のオーガスチンは

こんな考察は好きです。
楽しく読ませて頂きました。
昔のオーガスチンは色がつけてありましたよね。
赤弦は赤に、青弦は青に、弦の端っこが着色してありました。
色が違うと音も違うように感じていましたが、あれは気のせい???

Re: 昔のオーガスチンは

かおるさん、初めまして。
コメントありがとうございます。

少し前の記事ですが、一部ギター仲間の間では驚きをもって迎えられた記事でした(^^; オーガスチンの黒・赤・青の違いについては某業界関係者からの裏も取ったので間違いない事実と思います。プロアルテと同じかどかは不明のままです。

> 色が違うと音も違うように感じていましたが、あれは気のせい???

そういうことになるわけです。こうしたものの評価の常として、事前情報や情緒的な印象で、実際の評価が変わることはしばしばで、それが悪いとも思いません。またすべての事実を明確にしなければいけないというものでもないと思います。根拠のない情報にのってアレコレ詮索するのも、まあ楽しいお遊びと心得ています。

与太拝

No title

あ〜、なかなか面白いですね。
あなたの推測どうりこれはブロアルテのOEMでしょう。
私は低音弦しか使わないので知りませんでした。

Re: No title

亀さん、初めまして。コメントありがとうございます。
オーガスティンの黒・赤・青に関しては、他の業界関係者からも確定情報を得ているので間違いないと思います。プロアルテとの関係はまだ分かりません。ただ、元の素材を作るメーカ及びそれを廉価で、つまり大量に射出成型して糸にしているメーカは限られているので、大いにありうる話だと思います。
いずれにしても、音質評価・判別はかなりむずかしいと、つくづく感じます。

オーガスチン黒低音

とても面白かったです。高音の話はショッキングでした。なんでも確認してみるべきですね。プロアルテEJ45の低音と、オーガスチン黒の低音は、私の指が「違う」と言います。オーガスチンの弦は、指に匂いが付くからです。そしてフレット当たりによってすぐ変色が起きます。合金が違うと思います。

Re: オーガスチン黒低音

サマーユさん、はじめまして。
私も耳にしたときは???という状態でしたが、間違いのない事実だと思います。
またご指摘の通り、低音弦はプロアルテとオーガスチンとは別物でしょう。最近は少し個性ある音色を求めて、アクイーラ社のものを使ったりします。少々値は張りますが、私は古くなった弦の音色も嫌いではないので、交換頻度も少なく、出費は差ほどでもありません。

No title

通りすがりの者です。

ク○サワさんは高音弦プロアルテ、低音弦オーガスチン赤のオリジナルを提案していますが、この考察通りだと・・・・ということですよね。

Re: No title

古い記事を拾っていただき、ありがとうございます。
この記事はギター弾きの仲間内でちょっとした反響がありました。オーガスチンの黒・赤・青の高音弦が同一品というのは間違いない事実ですが、プロアルテと同じではないかというのは、まったくの想像ですから、裏付けはありません。ただ、ナイロン素材そのものの供給元がごく限られた化学メーカーしかないことから、いづれにしてもそう大きく違うものとは思えません。
クロサワのオリジナルセットも、音程の悪いオーガスチン高音弦に換えてプロアルテでという考えだと思いますが、まあ気分の問題くらいかなあというのが、感度の鈍い私の感触です(^^;

No title

オーガスティンのインペリアルとリーガルのテンションがどちらが上でどちらが下かを調べててこちらの記事に行き着きました。
黒赤青が同弦というのは他の人と同じく衝撃を受けました。
インペリアルとリーガルの件も明らかになりスッキリしました。

ダダリオ弦とのつながりについては個人的には違うと思います。根拠は、ピッチがズレるいわゆるハズレ弦の率がオーガスティンは頻発、ダダリオはほとんど無し、という事実によります。しかしロマンのある疑惑だと思います。(笑)

Re: No title

みっちゃんさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
黒赤青については間違いない事実ですが、プロアルテとの関連はまったくの邪推ですし、まあ、白黒つけるまで調査するほどことでもないかなあと思っています、個人の感性で選べばいいだけのことですからね。インペリアル高音弦は私も気に入っています。しなやかでいい弦だなあと感じています。
この記事以外にもギターネタをアレコレ書いています。カテゴリーの<ギター全般><楽器談義>から拾い読みして下さい。どうぞ今後ともヨロシク(^^

懐かしい名前です

オーガスチン、懐かしい名前ですね。
独断と偏見に満ち満ちた私見ですが、

高張力弦⇒長い弦長の楽器(ギター)向けの、長尺品
中張力弦⇒普通の弦長の楽器向けの、中尺品
低張力弦⇒短い弦長の楽器向けの、短尺品  だと思います

周波数は(張力/弦長・長さ当りの質量)の平方根、に比例するので、周波数を固定すると長さと張力は同時に変化し、どちらの表示も可能なので長さでなく張力表示にしたのでしょう。

張力は弦長に正比例するので、種々の弦長に最適な品種を揃えたのでしょう。
弦長の違う楽器毎に最適品種がある。即ち、各楽器に最適な(長さの)品種があり、
色々変えるものではない(長さが違うだけなので)。
紛らわしい限りです。

50年前、大阪堂島の楽器屋には3つも品種が並んでいた憶えはありません。
その当時、色が着いていた憶えもありません。昔の記憶は怪しいですが…。
あの頃はギターの弦長は殆ど同じだったので弦も種類がなかったのでせうか。
長文ごめんなさい。

Re: 懐かしい名前です

お父さん様 初めまして。コメントありがとうございます。
このオーガスチンの話は、私がSNSに書き込んだときも大そう驚かれました。そしてこのブログにも書き、その前後から、黒・赤・青の高音弦の扱いがようやく明確になってきたように思います。
弦の物理的解析はさほど難しい問題ではないと思いますが、きちんと納得できる理屈や検証に出会ったことがありません。まあ、大学の研究室のテーマにもなりにくいでしょうし(予算を出すスポンサーがつかないでしょうから)、仮に理屈や検証が成されても、弾き手の感じ方ひとつで覆ってしまう要素もありますよね。まあ、ひとぞれぞれの意見・所感でよいのだろうと思います。
半世紀前だと、オーガスチンはまだ今の黒ラベル相当したなかったはずです。赤ラベルが70年代初頭に出て、青ラベルが70年代半ばに出ました。 実はハナバッハの弦も…という話が以下の記事です。
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-2027.html

オーガスチンの高音弦

オーガスチンの高音弦が同じだったのは驚きました。なぜなら、オーガスティンで高音弦の不良品が多かったのは有名な事実なのですが、不良品が出る確率が黒・赤・青では違ったように記憶しているからです。記憶が正しければ私の場合赤ではほとんど不良弦がなかったように思います。ただし、腕が上達するになると赤から青に弦を変えたので赤の時代の私の技量で不良に気づかなかったのかもしれませんね。

Re: オーガスチンの高音弦

bstluteさん 初めまして。コメントありがとうございます。
そうですよね。この話、私も確認して驚きましたし、mixiの仲間内でもちょっと物議をかもしました。最近はオーガスチンの広告でも、ようやくはっきり分かるようになりましたね。私自身は赤と青を何度も使いましたが、幸い明らかな不良弦にあたったことはありませんでした。よく言われる音程の狂いも、左手押弦の力の入れ具合の方が支配的だなあと感じています。
実はハナバッハも…という話は以下の記事に…
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-2027.html

プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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