ヘルマン・ハウザー3世 2006年 #588


すでに演奏動画の中でカミングアウト済みではあるが、しばらく前からハウザーを使い始めた。1年ほど前から探し始め、この6月に都内の販売店でよい個体があったので購入した。2006年製でシリアルNo.588、1958年生まれのハウザー3世が50歳を前にした頃作られたもの。ハウザーの歴史は先々代1世時代のおよそ100年前にさかのぼる。特にセゴヴィアが1930年代後半からハウザー1世のギターを使い始めたことで一層評価が高まった。1世から2世そして現在は3世と娘のカトリンが4世として名門家系を受け継ぎ、伝統的な工法を守って決して多作でも寡作でもなく、ドイツ人らしく生真面目に年間二十本前後をコンスタントに製作している。


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■憧れの名器
ハウザーは今も昔もギタリストには憧れの名器の一つだろう。元々1世時代にはトーレスやサントスに範をとりスペインの伝統的なギターを志向した。その後2世時代になり60年代からはやや作風を変え、厚めの表板としっかりした作りの楽器になった。80年前後に2世から製作を引き継いだ3世もほぼ2世の流れを汲んでいるようだ。ぼくら世代にとってのハウザーは70年代から『簡単には鳴らない、張りが強い、弾き込みに年月を要する、和音の分離がよく透明感のある音色、抜群の遠達性』といった言葉で語られることが多かった。ぼく自身その憧れのハウザーを実際に手にしようとはついこの間まで思ってもいなかったが、ギター再開後の近年、ハウザーモデル・ハウザーコピー・ハウザーレプリカといった楽器をいくつか弾くうちに、やはり本物を手にしたいという気持ちが強くなってきた。

■入手まで
名門家系の常として、亡くなった先代に比べ今の惣領は…といった風評が付きまとう。今回も、今どきの3世作ハウザーを買うのか、ブランドの名前を買うようなもの、といった意見も耳に入ってきた。しかし時期を変え、店を変え、3世だけでも10本ほどのハウザーを弾いた結果、いずれのギターも類のない音作りと存在感を感じ、これだけ何度も弾いて、その度に確定的な好印象を持てるなら迷いはないと購入を決めた。先に記した通り手に入れたのは2006年製シリアルNo.588。スプルースの表板と横裏板は中南米ローズウッド(おそらくマダガスカルローズウッド)。糸巻きは独ライシェル社製のゴールド。ネックはVジョイントで塗装はラッカー仕上げ。弦長648mmでブリッジの高音側に音程補正を施している。いつくかあるモデルの中でセゴヴィアモデルと言われる最もオーソドクスなハウザーギターだ。中古品扱いであったが前オーナーが弾いた形跡はほとんどなく、新作といってよい状態だった。

■音の印象
ひと言でいえば、派手さのない正確で真面目な音。楽器の作り自体も多くの人が語っているように、長期シーズニングされた良い材料を使い、物理的にもオーソドクスかつ丈夫に出来ている。長期使用に耐え、日常のコンディションにもあまり神経質になる必要はない。厚めの表板が発する音は特に中高音域で高次倍音(高調波)が少なく、基音が太くしっかりと鳴る。低音のウルフトーンはG辺りにあるが、それほど突出はしていない。6弦FからG#まで低音はほどほどの胴共鳴を伴いながら十分なボリュームがある。ハウザーの音は透明感がある固めの音といった評価をよく聞く。透明感というと高音の輝きを伴って突き抜けるような音をイメージするが、そういう音ではない。やはり太い音というのが一番適当な表現だろうか。倍音が少なく基音が太く鳴るので、同じ曲を弾いていてもピッチが低く感じるほどだ。

単音が太く鳴ると和音を弾いた際に音が団子になって分離が悪くなるように思うが、ハウザーギターは和音もローポジション・ハイポジションとも美しく調和して響く。つまりぼってりした太さではなく、音に芯のある筋肉質の太さといえばいいだろうか。また厚めの表板と全体に剛性の高い作りのためか、プロアルテのノーマルテンション弦を張った状態で弦の張りはやや強めに感じる。但し楽器のサイズ自体はコンパクトなので身体によくフィットして弾きにくいとは感じない。「最初は鳴らない」という前評判から、音量感に乏しいのではないかと予想していたが、まだほとんど弾き込んでいない状態ながら、手持ちの数本のギターに比べても不足のない音量感で、ともかく太く強い鳴り方は独自かつ存在感十分だ。

■デヴュー戦
この9月に川越で開かれたmixi仲間の演奏会で初めて人前でハウザーを弾いた。仲間内での評価は社交辞令を差し引いてもまずまずだった。つたない演奏ながら会場後方あるいは会場の外にまでよく通って聴こえていたとのこと。弾いているぼく自身も、手元の音量は決して大きくはないが会場に響く音のエコーバックがよく聴こえてきて気持ちよく演奏できた。音響エネルギーが表板から無駄なく前方方向へ集中して放出されている感じを受ける。多分賑やかな販売店の店先でいろいろな楽器と共に弾き比べたら、目立つ存在ではないだろう。
知人に弾いてもらい聴く側に回っても印象は同じだった。<太い>とひと言で表現した音が実際には艶やかかつ伸びやかに聴こえ、贔屓目なしにいい音と感じた。その後ハウザー1世や2世のギターも弾く機会を得たが、1世あるいは2世の50年代までのものとその後のものとでは明らかにコンセプトが異なるように感じる。その辺りのことはまたいずれ記事に書きたい。

人生、こんなことなら…と後悔がつきものだが、ハウザーを30年前に意を決して買っていたら、弾き込みも進んで素晴らしい音に成長し、その後の幾多のハウザーモデルやハウザーレプリカへの散財もなく結果的に一生モノの高くない買い物になったはずだ。ハウザーの音に満足しながら、いささか遅すぎた決断だけを悔やんでいる。


ハウザー工房の紹介。 世界中のギター関係者の関心は、娘カトリンが4世として伝統の工房を引き継げるかどうかという点にある。



デヴュー戦にて。J.ハイドン/アンダンテ(バリトントリオから石月一匡編)



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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