ギュンター・ヴァント&NDR響1990年来日ライヴ ブルックナー交響曲第8番


11月も下旬。当地群馬県南部では街路樹のケヤキやイチョウも盛んに葉を落としている。三連休初日のきょう、午前中は雨という予報が少々外れ、ほんのわずかパラついただけで終わった。陽射しはなかったものの晩秋の一日は静かに暮れた。さて、あすも休み。久しぶりに大きめの曲をじっくり聴こうかと、先日買った盤の中からギュンター・ヴァントのブルックナー8番を取り出した。

<若き日のヴァント>
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日本の世間には長老崇拝的なところがあって、相当のキャリアを積みながらも、そのキャリアの真っ最中には大きな注目を集めず、晩年になってから急に脚光を浴びるということがしばしばある。音楽の世界、取り分け高年齢になっても現役を続けられる指揮者でその例をしばしばみる。ギュンター・ヴァントもその一人だ。1912年生まれで2002年に亡くなったヴァントだが、彼が日本で異常なほど注目され人気を得たのは彼が80歳を過ぎてからだった。ぼく自身も彼の名前はベートーヴェンの交響曲などで70年代から馴染みがあったが、ケルンを中心に活躍する中堅指揮者くらいにしか認識していなかった。実際80年代後半までのメディアの扱いもそうだったし、手元にある90年代初頭に出版された音楽の友社刊「指揮者名鑑」にはその名前すら見当たらない。60年代後半から何度か来日して日本のオケを振っているが、大きな話題になった記憶はない。そんなヴァントがにわかに注目され始め、そして一気に寵児となったのは90年代後半から最晩年にかけてだ。この盤は1990年11月サントリーホールでのライヴで、以降の過熱するヴァント人気のきっかけになった演奏。バブル景気崩壊前夜のこの時期、日本には多数の海外演奏家が来日した。このヴァントとNDR響の2週間前には同じサントリーホールでチェリビダッケが同じブルックナーの8番をミュンヘンフィルと演奏している。

いきなり結論めくが演奏はとてもいい。同じコンビによるブラームスの交響曲全集が手元にあるのが、その演奏同様、ひと言でいうと精緻で透明度の高い演奏だ。ブルックナーの8番と聞いてイメージする重量級で腰の据わった圧倒的な音響とは少し方向を異にする。音のテクスチャがどこをとっても明快で音の構造がよく見通せる。室内楽的な演奏といってもいい。ライナーノーツをみると、この演奏でヴァントは管楽器群の編成をだダブらせず、コントラバスも通常の8本から6本に減らした編成をとったと記されている。なるほど…そのことだけでもヴァントの意図が読み取れる。
第1楽章、こうした編成の意図が反映され、オケ全体の音が団子にならず各パートの出と入も明確に進む。フレーズ内での音量やテンポの伸縮をかなり意図的につけているのがよく分かる。オケの編成を大きくし、しかもコントロールが効いていないと、こうした動きについていけないだろう。第2楽章もスケルツォらしい動きの闊達な演奏で、鈍重なところがない。第3楽章のアダージョはまさに室内楽的な演奏で、とこのほか美しい。終楽章も様々なモチーフでフレーズのコントロールが実に丁寧で、美しさと当時にかげりのある曲想に、そうかこの曲にはこんな表情もあったのかと気付かされる。

学生時代からこの曲に親しみ、クナッパーツブッシュ、ケンペ、セル、シューリヒト、マタチッチ、チェリビダッケ、朝比奈隆などの名盤を折々に楽しんできたが、このヴァント&NDR響の演奏もそれらに勝るとも劣らない優れた演奏だ。


最晩年の演奏。8番;第4楽章の最後。
ワグナーチューバの咆哮。止りそうなくらいにテンポを落として20秒から静寂に戻ったあと、45秒で一旦トゥッティを確立し、更に1分05秒で確定し、1分30秒から最後の大団円に突入する。


マタチッチ&N響による全曲




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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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