まつむらスペシャル


松村雅亘SPECIAL/2010年作。事情あって関西某方面より拙宅にて預かり中。十年ほど前からS・グロンドーナのアドバイスを取り入れ、ほぼ隔年ごとに作っているスペシャルモデルで、レギュラーの注文品とは材料グレードも音作りも異なるものと思われる。表板はこれまでに見たことのないようなベアクロウ入りスプルース。横裏板は柾目ハカランダ。弦長650mm。糸巻きはスローン。塗装は表板セラック横裏カシュー。サイズはレギュラー品と変らないがずっしりと重い。


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松村氏のギターは短期間ではあるが70年代・80年代・90年代のものを使ったことがあるし、2000年代入ってからの作品も何度か試奏した。しかしこのスペシャルモデルはかつて弾いたことのある松村ギターとはかなり印象が違う。昔の印象はあやふやなので比較としてではなく、率直にこの楽器の印象を言うとしたら、ともかく太く・幅広く鳴る。以前の松村ギターはもっと音が締まっていて、張り詰めたような緊張感があったように思うが、この楽器は違う。もっと大らかにゆったりと鳴るのだ。

低音も高音も音量感は十分。低音のウルフは高めでAからB♭あたりにあるが、それよりも低い6弦のローポジションもエネルギーとサステインがあり、強く太い。ドーンあるいはボンッという低音ではなくビーンあるいはガーンに近い鳴り方だ。低音弦ハイポジションのサステインも長く、消音に困るほどよく持続する。高音は低音に比べてやや線が細い感じもするが、タッチ次第でどこまでもダイナミクスが広がる手応えがある。低音から高音までの全体バランスは良好で、和音もきれいに調和して響く。現状は弦高を限界まで下げてあり、サウンドホール中心あたりで少し強いタッチで乱暴に弾くとビリつくレベルだが、反面、テンションは決して強くなく弾き易い。これで音に芯がないとボケた音になりかねないが、低音高音ともしっかり核がある鳴りで、おそらく離れて聴いていてもよく通る音ではないかと思う。

70年代後半から80年代にかけて、松村ギターは他の国産ギターとは一線を画す音作りで、関西を中心に多くのハイアマチュアやプロに使われた。福田進一、大萩康司らトッププロも松村ギターで育った。今も2年以上のウェイティングリストがある状況は変らないようだが、このスペシャルモデルを弾く限り、少し前の音作りとはだいぶ変化してきているように感じる。


2000年作の松村ギターを弾く北口功。北口氏は松村氏とは同じ地元ということもあってか以前から様々な交流を持っている様子。このソルの演奏も求心的で緊張感のある弾きぶりだが、出てくる音は正しいアーティキュレーションとフレージングで、古典的な様式感に満ちた素晴らしい演奏だ。



マイブログの松村工房訪問記;
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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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