ハーベス社 HL-P3ESR <続き>


ハーベスのスピーカー;HL-P3ESRのレヴュー。前回の続き。

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YouTubeにアップした残りの二つを貼っておく。一つはLP盤でベーム&ベルリンフィルによるシューベルトの第5番。もう一つはCD再生で、チック・コリア・アコースティックバンドの演奏で「スペイン」。共に前回同様、自宅の8畳間でいつも聴いているようにセッティングをし、ソファの背もたれのちょうどぼくの頭の位置辺りにZOOM社のレコーダーをセットして、スピーカから出る音を録音した。つまらない写真を添えてスライドショーにしたところも前回と同じだ。一つだけお断りしなければならないことがある。この動画をアップしたあと、YouTubeのチェックに引っかかり、この二つの動画に関しては、携帯端末での再生が不可になっている。UMGの著作権侵害とのことらしいが、動画画面に出てくるジャケットの文字を読み取っているのだろうか。


まずLP再生でベーム&BPOのシューベルト交響曲第5番。録音条件等は一昨日の記事と同じ。



ついでCD。チック・コリアの「スペイン」アコースティックヴァージョン。



一昨日の記事ではHL-P3ESRを手放しで絶賛したが、まったく死角がないかと言えばそんなことはない。ネガティブな要素を書き連ねるのは、何事につけ避けたいと思っているが、このスピーカーの性格を記すという意味で冷静な分析をすると以下のような点が思いつく。
まず大音量再生は無理だ。20畳以上の大きなリビングルームでブルックナーを悠然と鳴らしたいとか、モダンジャズの熱いセッションの音を浴びたい向きには薦められない。昨今の小型スピーカーは店頭やイヴェントでのデモ効果を意識してか、少々の大音量再生でもへこたれないモデルが多い。しかしこのハーベスはその点においてはまったく対応不可。8畳の部屋でも少し(ぼくにとっての少しは普通の人にとっては相当な大音量)音量を上げると、フュージョン系のエレクトリックベースなどは時としてボトミングを起こしてしまい、つまりスピーカのストローク限界を超えて一気に歪んでしまう。また先日のコメントで低音も十分と書いたが、大型機のそれとは質も量も異なる。グランカッサの一撃を風圧で感じることは無理だ。50Hz近辺のコントラバスの音程も聴き取れるが、よく出来た中大型機にはもちろん及ばない。ほぼ同じ大きさの現有機リビングミュージック社のS-2Cに比べても低音の量感は少ない。また中高音のリアルさや立ち上がりも決してほめられたものではない。つまり現代的な視点で見ると欠点はいくつもある。

では何故、ロジャーズのLS3/5aまでさかのぼる系譜を今も受け継いで、この手のスピーカーが何機種か生き延びているのか。結局のところそれは、音楽を<常識的>に楽しむ範囲において必要十分な再生音が得られるということに尽きる。<常識的>の定義でもめるだろうが、そういうことを議論すること自体が常識的ではないと心得るべきだ。ハーベスの故郷であるイギリスのみならず、欧州の家庭のリビングルームは決して広くない。仕事で何度かドイツや北欧の一般家庭にお邪魔する機会があったが、リビングルームは今の日本の標準と変らず10~12畳前後が多かった。もともと寒い北欧州だから、暖房のことも考えるとそんなに広いリビングは有り得ないし、家自体もコンパクトだ。そういう常識的な広さの部屋で、夕食を終えたあとに部屋にセットしたオーディオで音楽を楽しんだり、今度行くコンサートの予習をしたりと、そんな常識的な使い方を想定したオーディオセットの系譜が今も残っている。このハーベスのスピーカーなどはその典型だろう。但し典型にしては価格は安くない。音楽やオーディオに特別の趣味を持たない家庭では、このスピーカーは買わないだろう。あくまで商品のコンセプト、想定したイメージがそういう常識を前提としているということで、その前提に立って、かなり徹底的に細部を磨き、デザインを練り、性能を確保し、プロモーションをし、そうしたことでコストが上がった。実際このHL-P3ESRを前にしてよくよく眺めると、どんな部屋においても違和感のないオーソドクスな大きさと縦横比、色合いとデザイン、そうしたものがかもし出す常識的で節度ある佇まいに、もう音のことなど二の次になりそうになる。何年経っても色あせない常識的な普通さ加減。そしてそれを高い品質と質感で実現し維持する。何もこのハーベスに限らず、靴やバッグ、時計や生活用品など、欧州の数あるブランドの価値観そのものだ。

大阪のオーディオ販売店「逸品館」のHPにハーベスの一連の新機種レヴューがアップされている。逸品館はオーディオマニアの間では有名な店で、プロ級マイクロフォンでスピーカーの音を録音し、比較するという試みをかなり前からやっている(今回のぼくの試みはそのマネ事)。オーディオ雑誌の提灯記事よりは、よほど参考になる。

逸品館でのハーベス製品レビュー。
http://www.ippinkan.com/harbeth_monitor301-201.htm#HL5


同店、小型スピーカーの比較試聴。YouTubeで実際の音を確認できる。
http://www.ippinkan.com/small-speaker_test-2012-8.htm



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No title

こんばんは
私も過去に欧州製の2種類、いずれも12cm級のブックシェルフを使ったことがありますが、1つはフルレンジにツィーターを追加したもの、これは音像をくっきりと表すタイプ、しかし低音が出ず、音量を上げると耳疲れするものでした。もう1つは正反対で、ウーファーのストロークは大きいようで大編成オケの押し出し感も結構ありましたが、音場の表現はやや犠牲になった感じでした。聴きやすさで長く使ったのは後者でしたが。
ところで一つ質問ですが、交換したばかりの針は最初から本領発揮するでしょうか、それともいくらか鳴らし込んでからでしょうか?

Re: No title

こんばんは。
michaelさんはヨーロッパの音を経験済みなのですね。私は今回が初めてです。まあ、今やいろいろなモデルがあるでしょうから、欧州製イコール…というようなステレオタイプの状況はないとは思いますが、かたくなに伝統的なイメージを守るメーカーは大したものだと思います。

> 交換したばかりの針は最初から本領発揮するでしょうか、

この辺はよく分かりません。しばらく使ったカートリッジを新品に変えると、やはりフレッシュで鮮やかな音になることは経験していますが、針の劣化かその他ダンパーゴムなどの劣化ははっきりしません。針だけの交換というのはしたことがありませんの。でも寿命があるのですから、初期特性、安定期、次第に劣化、ついに仕様はずれ…という流れはあるのでしょうから、新品よりは少し馴染んだ頃がベストかもしれません。ただ、馴染むといっても針先だけでなく、振動系全体のエージング、安定ということかなと思います。


No title

今も昔もこちらのブログ問題なく見れます。
動画参考になりました。ありがとうございます。

Re: No title

休憩中さん、はじめまして。

> 今も昔もこちらのブログ問題なく見れます。
> 動画参考になりました。ありがとうございます。

レポートありがとうございます。
引き続き、アクセスよろしくお願いします。

与太拝@出先

そうですねえ

おはようございます
確かに最近「遅い」と感じます。
前はこれほどでもなかった様な気もしますが、まあ結論から言うとボクの場合は許容範囲内です。
利用環境にもよると思いますよ、ボクのところはMacでFireFoxでWAN光LAN無線です。
初代のiPadではよく落ちます。
YouTubeを外せば確実に速くなるでしょうけど、このブログの魅力が半減しますよね。

LS3/5a

はじめまして、僕もスピーカーを取り替えるにあたってHL-P3ESRとLS3/5aどちらかで悩みに悩んだ末にStirling Broadcastにしました。
アコースティックなボーカルを好んで聴くので、この2つに絞ったのですが、実際に聴くことができなかったので逸品館のレビューも参考にしました。
最終的には円安とはいえまだ国内で買うよりは安かったこともあり、イングランドのショップから個人輸入しました。
HL-P3ESRは本国では販売されていないらしく、それもLS3/5aを選んだ理由でもあります。
今日こちらのブログで音を聴け、HL-P3ESRに後ろ髪を引かれつつも、品物は明後日に到着する予定です。

また、私の環境では、PCもスマートホンでも普通に観えました。
これからもこちらのブログを楽しみにしております。

Re: そうですねえ

iOSとYouTubeのマッチングはWindowsより良好かと思っていましたが、まあいろいろなのですね。YouTubeは埋め込まずにURLだけ記載する手はもちろんありますので、今後は状況次第ということにします。

Re: LS3/5a

hiromayuさん、初めまして。
Stirling Broadcast社のものの方が、オリジナルRogersへの忠実度としては高いと聞いています。到着楽しみですね。逸品館の記事は少々バイアスがのっているものと思いますが、いろいろな試みと意欲には感心します。 今回のスピーカー音の生録は、素人がおもちゃの様なレコーダーで録ったものなので、お遊びとしてみていただければと思っています。 当ブログはクラシックネタが7割程度ですが、ジャズやポップスのボーカルものも時々登場します。またいろいろ教えて下さい。

No title

お返事有難うございます。
僕は高崎市在住です。
隣町の若旦那のオーディオショップもだいたい見当が付きます。
事情があって、大きなオーディオシステムが置けないのでCDPとアンプとスピーカーだけです。
それもありまして、ブリティッシュサウンドです。
レコードプレーヤーが置ける方が羨ましいです。

Re: No title

hiromayuさんとは遠からずの所にいるわけですね。
某ショップにお願いしていたELAC310も無事売れました。305はまだ店頭にあります(^^; ブリティッシュサウンドなるものの存在は昔から知っていましたが、自分の嗜好には合わないと思っていました。今回のハーベスで認識を変えました。 レコードプレイヤー何とかなるといいですね。

プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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