市原愛マーラーを歌う 高関健&群馬交響楽団演奏会


きょう土曜日、野暮用が夕方までに片付いたので、予定通り群馬交響楽団の演奏会へ足を運んだ。いつも本拠地高崎で行われる定期演奏会とは別の演奏会で、JR前橋駅近くの前橋市民文化会館での開催。拙宅からは歩いて15分。昼間の暑さがまだいえない時刻だったが、散歩がてら歩いて行くことにした。


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きょうのプログラムは以下の通り。こんな田舎のコンサートにも関わらず中々マニアックなプログラムだ。
マーラー/ 花の章
マーラー/《子供の魔法の角笛》より
 ・この世の生活(Das irdische Leben)
 ・誰がこの歌を作ったのだろう(Wer hat dies Liedel erdacht?)
 ・高い知性を讃えて(Lob des hohen Verstands)
 ・トランペットが美しく鳴り響くところ(Wo die schonen Trompeten blasen)
 ・天上の生活(Das himmlische Leben)
―休憩―
マーラー/交響曲第4番ト長調

  ソプラノ:市原 愛  高関健&群馬交響楽団


高関健の指揮姿を見るのは、彼が群馬を去った2008年の2年ほど前だったから7年ぶりになる。開演時刻の6時半ちょうど、団員が入る前に高関氏が登場し、きょうのプログラムについてのプレトークがあった。以前と変らない足取りとよく通る声にひと安心。マーラーの楽譜校訂には一家言を持つ高関氏らしく今回のプログラムの裏話を披露してくれた。 プレトークが終わってほどなく団員が登場。きょうは本拠地でないことと、会場がやや狭いこともあって、弦の編成は変則12型(12-10-8-8-6)。もちろん高関氏らしく対向配置。コントラバスが1stヴァイオリンの奥に並ぶ。

<花の章>はぼくの手元にあるマーラーの盤では、ラトルとバーミンガム市響との第1番(1997年録音)に含まれている。<花の章>単独での演奏はよくあることなのだろうか。開演していきなり目立つソロを取るトランペットはさぞ辛いだろう。少し音程にあやうい感じがあったが、すぐに持ち直し、曲後半の同様のソロは見事に決まる。この楽章が入ると第1番も随分違った印象になっただろう。高関氏の指揮ぶりは以前を変らず。明確なタクトポイント、各パートへのアインザッツ、フレージングの指示…指揮を見ているとスコアが見えてきそうな指揮ぶりだ。
続いて《子供の魔法の角笛》。15曲ある同曲から今夜は5曲が選ばれた。声楽物にはまったく疎く、市原愛についても不案内。内外での演奏活動はもちろん、国内の様々なイヴェントにも出ているようなので、知らないのはこのぼくだけかもしれない。《子供の魔法の角笛》は、そのものを聴くことはほとんどなく、もっぱらマーラーの2、3,4番の中でモチーフとして親しんできた。しかし今夜の演奏を聴いて、遅まきながらこの曲が単なるオケ伴奏の歌曲に留まらないことを実感。とにかくオケパートがよく出来ている。歌がメイン、オケはサラッと伴奏…そういう曲ではない。高関氏は後半の交響曲4番同様、細かな指示を出し、バランスを整え、そういう作業を精緻にこなしていた。リハーサルでもきっと細かな指示が出ていたに違いない。それくらいしないと、この《子供の魔法の角笛》の真価は分からないだろう。市原愛のソプラノはリリカルでやや控え目でマーラーのこの曲の世界には相応しく、とても好感が持てた。

休憩をはさんでマーラーの第4交響曲。ここでも高関健の解釈と指揮は見事だ。鈴の音で始まる第1楽章はごく中庸なテンポ設定。しかし頻繁に変るフレーズごとにかなりテンポを動かす。キレを要求するところ、大きなフレージングで歌うところ、それぞれに適切なテンポを設定して切り替えていく。妙な例えだが、マーラーの交響曲はオケのあちこちで小爆発が、それも予期せぬタイミング起こる、そんなイメージがある。ブルックナーとは正反対だ。そういう小爆発をコントロールし、きちんと聴き手に示しつつ全体の統一感を感じさせる、その辺りが指揮者の腕の見せ所。その点、高関氏は完璧だ。それこそ1小節の間に3パートに指示を出すくらいの器用さ。対向配置で右側にいる2ndヴァイオリンに前の小節からのフレーズの終わりを示したあとすぐに木管群への鋭い発音を指示、4拍目で左奥にコントラバスにピチカートのアインザッツを送る。そんな具合だ。そんな風に細部にこだわりながら、第3楽章では何度か繰り返される美しい主題とその都度変化する和声のキモをしっかり聴き手に届けてくれる。「マエストロ高関様、参りました」のひと言だった。

4番の終楽章では《子供の魔法の角笛》の<天上の生活>が再び歌われるわけだが、ソプラノの市原愛は第3楽章が始まるときにステージに入って、4楽章まで指揮者横のイスで待っているのかと思っていた。しかし3楽章になっても入ってこない。では3楽章が終わってから入るのだろうと思っていたところ、サプライズが…。何と第3楽章終盤、グランカッサも入って大団円の真っ最中に、その音楽にのせて登場したのだ。そしてアタッカで4楽章へ。これには驚くと同時に一気に気分高揚。4番を演奏会で聴くのは初めてだが、この段取りはよくあるものなのかどうか。ドレスを着替えた市原愛は一層美しく、見事な演出と合せて終楽章の<天上の生活>を楽しんだ。

全曲を通じて、きょうの群響は特に管楽器群が健闘。特にホルンセクションは第1楽章中盤の目立つソロでは、かなりの強奏でのびのびと吹き切り、また第3楽章途中では5名がベルアップして力強いところを見せてくれた。音楽監督を辞めて以来5年4ヶ月ぶりに登場の高関健氏の健在ぶりに当地で触れることが出来たのもうれしい。《子供の魔法の角笛》をオケ伴奏で初めて歌ったという市原愛にもこれから注目していこう。終演後の道すがら夜風が気持ちいい夏の盛りの一夜。いい演奏会だった。


一昨日チョン・ミョンフン指揮ミラノスカラ座フィルによる全曲を貼った。実は記事をアップしたあと、じっくり聴いて驚いた。ミラノスカラ座フィル…めっちゃ巧い!どんなフレーズも歌う歌う!チョン・ミョンフンの指示もあるだろうが、きっと彼らの身体に染み付いたカンタービレに違いない。ぜひPCにヘッドフォン挿してじっくり聴いてみて下さい。
今夜は歌うことでは負けていないアバドとルツェルン祝祭管の演奏を貼っておく。




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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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