ちょっとレトロなSTAX SR-5
MC型カートリッジの定番、DENONのDL-103が10月から価格改定だそうだ。それも50%近い高率。この春にオルトフォンSPUを導入してから出番がなかった103だが、これを気に駆け込みで1個新調することにした。新調といっても103の場合は手持品を差し出すと針交換扱いで新品がやってくる。きょう午後行きつけのオーディオ店に出向くと、同じような駆け込み針交換の103がレジの横に数個転がっていた。みな考えることは一緒だ。「まあ、メーカー側も今までよくこの価格で頑張ってきましたよ。音はオルトフォンに負けませんからね。」と店主。社会人になってようやくまともなオーディオセットを手に入れ、そのとき選んだのがDL-103。以来およそ10年おきに三回ほど買い換えただろうか。ちょっと大げさだが、今回がおそらく人生最後の103になる。
まあ、珈琲でも一杯と店主に誘われて一服。「最近、夜中に聴くとことが多いので、ヘッドフォンを何か見繕おうと思っているのだけど…」「あっ、それならこれどうです」…と店主が指差す方向をみるとちょっと見慣れないヘッドフォンが。「STAXのかなり初期のモデルですけど、状態はいいですよ。よかったら持って帰ってゆっくり聴いてみて下さいな。」


…というわけで、STAXのSR-5とドライバユニットのSRM-1が突然やってきた。STAXのヘッドフォン(同社はイヤースピーカと称している)は20年ほど前にしばらく使ったことがある。ややスマートな鳥かごスタイルのΣシリーズで音は文句なしに良かったが、高分子ポリマーの極薄フィルムがゴミを呼び込みがちで2回メンテナンスに出した。そんなこともあって、その後は安直にソニーのダイナミック型(スタジオ仕様でお馴染みのMDR-CD900)でお茶を濁していた。さらに悪いことに、そもそもいま使っているアンプもCDプレイヤーもヘッドファン端子が付いていない。アンプにヘッドフォン端子を付けることによる音質劣化は無視できるレベルだと思うが、そこはその潔さを音質優先の売り文句にしているのだろう。そんな事情もあってヘッドフォンで聴くにはアンプをちょい改造して出力を取り出すか、昨今流行のヘッドフォンアンプを追加する必要があった。そんなところにSTAXの出物。SR-5、SRM-1共に70年代後半の製品で、デザインや作り、布製ケーブルなど、中々レトロで心ひかれる。
持ち帰ったセットにさっそく灯を入れる。30年余を経てそれなりに汚れもあるが、耳当てパッドやケーブル類はとても状態がよく、プラスティックの筐体も傷はないので、少しコンパウンドで磨けばきれいになりそうだ。ドライバユニットのSRM-1は天板に開いた冷却用の穴から中を覗くと、今では珍しいキャンパッケージのTO3型トランジスタが並んでいる。この頃は直流バイアスの電圧はまだ230Vの時代だ。
装着感はとてもいい。大きさの割には軽量で、耳当ての形もジャストフィットする。録音の特徴がよく分かっている盤をいくつか取り出して聴いてみた。第一印象は、コンデンサー型という仕様から想像するより、あるいは以前使っていたときの記憶よりずっと密度感のある濃い口の音。帯域は欲張らずに中音域のエネルギー感、密度感が優先されている印象だ。おそらく当時と、その後80年代後半バイアスが高くなって以降(CD時代以降といってもいいか)の差だろうか、もっと高域が延び、いかにも分解能の高いすっきりした音を想像していたが、その想像とは異なる。低域は元々コンデンサー型はよく延びるがエネルギー感というか押し出しは強くない。このSR-5も同様で、オーケストラのコントラバスの最低音までよく聴き取れるが、ボリューム感は控え目だ。これはむしろ歓迎すべきで、帯域が延びていないのに設計の悪いバスレフのようにボワボワとボリューム感だけ欲張っているものはまったく手に負えない。


一昨日手に入れたカラヤンのメンデルスゾーン<スコットランド>では、70年代当時の典型的なDG&カラヤンサウンドの特徴がよく分かる。イエスキリスト教会の豊かな残響とカラヤンのレガートな音楽作り、そしてややナローレンジで低域のしっかりしたの音響とが一体となって、どこまでも滑らかで耳に心地よい仕上がりになっているのが聴き取れる。オスカー・ピーターソントリオのプリーズ・リクエスト#6You Look Good To Meでのレイ・ブラウンのベースは、最低域までよく延びるがボリュームは控え目。一方低域から中域の分解能は良好で、アップテンポになってからのソロフレーズの部分で、ソロに合せてレイ・ブラウンが小声でスキャットしていることに初めて気付いた。ヤニグロや五嶋みどりの盤では弓を降ろす一瞬前のわずかな呼吸や気配がよく分かる。ペライアのバッハは、近めに録られたリアルな音像が十分なエネルギー感で聴こえてくる。何もこのSTAXを絶賛するつもりではなく、ある程度配慮されて作られたヘッドフォンであれば、同様の印象を得るだろう。それと全体にややナローレンジながら中域のエネルギー感に満ちているという結果は、使っているCDプレイヤーの特性による要素もあるに違いない。いずれにしても30年前に品物ながら不具合はまったくないし、音、装着感とも及第点という結果になった。
そのヴィジュアル共々音もややレトロなこのSTAX。値段も手頃。しばし熟考ののち、このまま拙宅に居座ってもらうことに決めた。これで秋の夜更けのリスニングも万全だ。くだんの店主には明日にでも電話を入れて、引き取りたい旨伝えることにしよう。
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