アナ・ヴィドヴィッチ(G)当地来演


先日7月6日の日曜日。ギターのアナ・ヴィドヴィッチのコンサートへ行ってきた。
このところ1年おきに来日しているアナ。今回は東京6/30、横浜7/1、京都7/3、武蔵野7/4、名古屋7/5と回り、7/6前橋が最終日という強行軍。当地来演は2010年秋に続いて2回目。どういう理由で地方の、それも前橋に来演するのか不明だが、地元原住民としては大歓迎。しかも1500円という東京公演の数分の一というチケット代金には二度びっくりだ。


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演奏曲目は以下の通り。

 タレガ:アルハンブラの想い出
 ソル :モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲 作品9.
 トローバ:ソナチネ
 バリオス:神の愛のほどこし(最後のトレモロ)
 アルベニス:グラナダ
  ―休憩―
 トゥリーナ:ソナタ作品61
 テデスコ:ギター・ソナタ「ボッケリーニを讃えて」作品77
 ラウロ:エル・マラビーノ
 ラウロ:ベネズエラのワルツ 第2番&第3番
 <アンコール>禁じられた遊び、イエスタデイ/武満徹編

特筆すべきは、近現代のギター作品を代表する重要なソナタ作品、トローバ、トゥリーナ、テデスコのソナタ3曲が取り上げられたことだ。この3曲が一度に聴けただけで、他のいささかごった煮的な選曲も、大目に見ようかという気になる。ただ後半についていえば、テデスコのソナタのあとにラウロをおく意図がまったく不明。アンコールならいいだろうし、前半にスペイン系列の流れとして弾くなら、まだわかる。欧州近現代の雰囲気を持つトウリーナ、テデスコの名曲のあとに、ラテン歌謡調のラウロを弾かれて台無しと感じるのは、ぼくだけではないだろう。ラウロは前半に入れ、トローバを後半に持ってきていたら、聴く側の気分の切り換えと併せ、コンサートとしてまとまりはずっといいように感じた。実際、終演後の居合わせた知り合いらの評もほぼ同じものだった。

それはともかく演奏だ。
…巧い。
難易度の高いスケールやセーハの連続もほとんどノーミスでさらりと弾く。ぼくが気付いたミスらしいミスは、トローバのソナチネ第3楽章中の一カ所だけだった。豪州爆音系ギター:ジム・レッドゲートから出る音は500名の小ホールに十分響く。しかし、あえて言おう、それだけ技術的に完壁な音を出しながら残念なことに、湧き立つような音楽の感興に乏しい。もっと有り体に言えば「ノリが悪く、音楽が暗い」のだ。

前半の曲ではフレーズの頭にことごとくちょっとしたルバートがかかる。テーマの最初の提示だけならそれも常套手段だろうが、繰り返しも含めてやられると音楽が流れなくなる。スペイン物ならそれも理解できるが、古典様式のソル「魔笛」にあっては疑問が残る。それに対して近現代のソナタ3曲の方が比較的よかったのは、これらの作品の楽譜がしっかり書かれていて、理にかなわない解釈を持ち込みにくい構成になっているからだろう。加えて、これも居合わせた知り合い数名が同様に口にしていたことであるが、ダブルトップ&ラティスプレージングのジム・レッドゲートの音自体にいささか問題があった。もちろんよく鳴る楽器だということは知っているが、そのエネルギーバランスが中低音の偏り、艶やかで伸びのある高音が聴こえてこない。90年代から流行りだしたダブルトップ&ラティスプレージングのギターは、ぼくも何度か弾いたことがあり、圧倒的な音量感には惹かれるものの、カラッとした音の発散やタッチに応じて変化する音色に乏しい。アナ来日コンサートのほとんどすべてを聴きに行っている知人は、彼女はここ数年でレッド・ゲートを何本か取り替えているが、今回の楽器はあまりいい状態とは言えないと話していた。ノリの勢いだけの演奏がいいとはこれっぼっちも思わないが、彼女のやや単調な音色感と躍動感の乏しさは、大いに気になった。

最近少しコアなギター愛好家の間で評価が高いイリーナ・クリコヴァとつい比べてしまうのだが、クリコヴァの弾くテデスコやボンセなどを聴くと、明と暗、色彩感とモノトーン、そうした対比が明確に表現される。同じ爆音系ながらクリコヴァの弾くサイモン・マーティから繰り出される音は、ずっと多彩で表現の幅が広い。
モデルとしてもやっていけそうなヴィジュアルのアナ・ヴイドヴィッチが、表情豊かな音色で躍動感に満ちた音楽を奏でたら、きっと敵無しだろう。次回来日が2016年に予定されているそうだ。楽しみに待とう。





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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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