サイモン・マーティーのギター
諸事情あって、サイモン・マーティー(豪)作のギターを検分中。昨今、多くのステージプロに愛用されていて人気の楽器だ。表板:松、横・裏は中南米ローズウッド(アマゾンローズか)、弦長650mm。2006年作。表板に少し弾きキズがあるものの、楽器としての状態は申し分なし。
2年ほど前に一時借り受けてしばらく弾いたことがあるサイモン・マーティー。そのときの印象と今回の楽器は少々異なる。前回弾いたものは表板が杉、楽器としての個体差、当方の耳のコンディション、雑多な不確定要素もあってのことだが、今回の印象の方が遥かにいい。








表板はオーソドクスな単板。裏板はアーチバック形状しで、センターで接がれている。今回内部写真を撮っていないが、ブレージングはサウンドホールから放射状に広がる形状で、ラティス型ではない。ブリッジはジョン・ギルバート(米)を模した形状、糸巻きもギルバート製だ。ボディーサイズは特に大きくはなく、例えば日本の河野ギターなどと同程度。但し、重量は裏板の違いでずっしりと重い。2キロは超えているだろう。
この楽器でとかく注目される音量は確かに大きい。しかし、流行りのダブルトップ+ラティスブレージングの鳴り方とは違っていて、オーソドクスなギターの音色を兼ね備えている。以前弾いたときは、すべての低音がウルフトーンと伴って響く印象があったが、今回のものはずっと音がしまっている。中高音共々、音量大小というよりは、エネルギーに満ちた鳴り方で、音の抜けが抜群にいい。低音のウルフトーンはほぼGだが、前後の6弦ローポジションはいずれも量感豊かに鳴る。5弦ハイポジションの音のつまりも少ない。高音のサステインも長く、やや倍音が多いものの、単音でメロディーを弾いて心地よく歌える。
前回借り受けて弾いてから、気になるギターではあったが、そうそう爆音を必要とすることもないし、やはり音色の魅力は20世紀前半までのスパニッシュテイストの軽い楽器に勝るものはないと思い、サイモン・マーティーほか、流行りの新コンセプトギターは視野外であった。しかし、昨年秋からチェロとのアンサンブルを始めるにいたり、こちらの気持ちと楽器の反応とがマッチしない局面を何度か経験し、今風の楽器も1本あってもいいかなと。そうはいっても、アナ・ヴィドヴィッチのコンサートの印象もあって、ダブル・トップ+ラティスブレーシングには引き続き懐疑的だった。そこへ今回のサイモン・マーティーの出現。思いのほかオーソドクスなギターの音色感を持っていて違和感がない。
現在、新品での日本入荷はほとんどなく、もっぱらプロの注文でいっぱいの様子。「何か下取りあれば高値で引き取る」との楽器店店主の甘いささやきもあって思案中だ。人生は短し。思案してばかりでも先に進まないなあ…
只今イチ押しのイリーナ・クリコヴァほか、サイモン・マーティーを愛用するプロは多い。
アナベル・モンテシノス
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