美音系なのヨ…ゲルハルト・オルディゲスのギター
秋深し、与太は何をする人ぞ…
弦楽四重奏の渋い響きに浸っているかのような記事が続き、さぞや思慮深き日々を過ごしているかと思いきや(誰も思わないか…)、実は10月以降、物欲爆裂! 手持ちのギターを一気に5本放出、そして2本調達という、荒れた日々が続いた。アレ買いましたコレ買いました的な記事は、買い物情報の参考になる一方、いい印象を残さないケースも多く、記事に書くときは慎重を期しているつもりだ。しかし、今回のオルディゲスのギターについては、絶賛を惜しまない気持ちに抗しがたく、ここに記すことにする。
ゲルハルト・オルディゲスのギターが2週間ほど前にやってきた。数年前から一目も二目も置きながら、新作価格の高さゆえに歯ぎしりをしていた楽器。10月になって都内恵比寿のディーラーに出物があって試奏した。オルディゲスがもっとも力を入れているハウザー1世モデルの2008年作。外観程度はわずかな傷があるものの、極美品といってよい状態。都内での仕事帰りに時間をみつけ試奏に出向いた。慎重に調弦をし、ゆっくりと単音を確かめ、そして和音を弾く。たっぷりと響く低音。よく伸びる高音。そして完全に調和して響く和音。即決! 店主の計らいで、手持ちギターの下取りと委託販売も快く応じてくれた。




表板はベアクロウ入りのスプルース。横裏は白い芯材を持つハカランダ。糸巻はロジャース。いずれも第一級の素材。加えて、12フレットから上の指板と表板の間の差し込まれた薄い板材、駒に潜む隠し釘など、いずれも忠実にハウザーをトレースしている。重量は1500グラムを切る位。作りの基本は軽量なハウザー1世時代のものながら、おそらくハカランダの重さが効いているものと思う。
低音ウルフはF#~F。6弦5フレット以下から開放まで、どっしりとした重量感のある低音が出る。そのオクターブ上にあたる5弦7フレットから12フレットでの音の詰まりも少ない。6弦ローポジションにウルフトーンをセットしてたっぷり響かせると、その反動でオクターブ上の5弦ハイポジションが詰まり気味になることが多いのだが、そこをうまく回避している。そして高音。これが素晴らしい。ウルフを低めに取った低音重視の楽器では、しばしば高音の余韻が短めになる傾向がある。それはそれで、やや古風な響きとして味わい深いのだが、今回即決したこのオルディゲスの楽器はそれがない。1弦、2弦とも7ポジション以上の音がよく伸びる。決して張りは強くなく、音質の基調は木質系ではあるが実にキラキラとして艶やかな音が響く。キラキラしていながら金属的でないというギターは初めて出会った。そして自宅のデッドな部屋で弾いているにも関わらず、ナチュラルなエコーが付いてくるようにさえ感じる。この印象はともすると、響きが過剰で音の分離の悪さにつながりそうだが、それがない。今回放出した5本と手持ちのギターを含め、ぼくが今までに弾いた楽器の中でも、もっとも美しい音を奏でるギターの一つと断言でき、そして名器のみが持つ独自の風格と響きの良さを持っていると言える。
ルネサンス期リュート作品のシンプルなフレーズも飽きない。ソルやメルツの和声も調和的に響き申し分ない。スペイン物も艶やかな高音メロディーがたっぷり歌える。今のところ、どこから見ても死角が見当たらない。新作はユーロ高もあって益々値上がりだとか。2000年以降の中古出物でもあればぜひにとお薦めできる楽器だ。
オルディゲスを使っている岡野雅一氏の演奏。2012年6月近江楽堂。デジカメによる録画と思われ、音はイマイチだが雰囲気だけでも。 岡野さんとはmixiの集まりで何度か顔を合わせ、一緒にアンサンブルで弾いたこともあった。1982年クラシカルギターコンクールの覇者にして有能な勤め人。2年程前、ギターリストとして本格的に活動を始めるにあたって選んだのがオルディゲスの楽器だった。
本家ハウザー1世を駆使する名手:ホルヘ・カバレロ2題。 オルディゲスのハウザー1世モデルは、本家に勝るとも劣らない、素晴らしい響きを持っている。
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