2014年 述懐 <六弦編>


今年もまもなく終わり。月並みな言い方だが、気付けばあっという間の一年。いくつかの楽しいこともあり、心痛むこともありの一年だったが、まずは大過なく過ごせたことを振り返り、自分を取り囲むアレコレに感謝しよう。
さて本年述懐。きょうはブログタイトルのうち<六弦編>、マイ・ギターライフを振り返る。
クラシックギターを始めたのは1970年高校一年のときだから、足掛け四十年余ということになる。といっても長いブランクもあり、本格再開したのは数年前のことだ。再開後は遅れてきた道楽バブルよろしく、楽器調達に他流試合にと楽しく過ごしてきたが、今年はその流れに幾らか変化があった。

◇楽器の整理◇
ここ数年、様々なタイプ・時代の楽器を手元において楽しんできたが、もともと楽器蒐集の目当はない。最初から承知していたことだが、多くの楽器を手元においてもそれぞれの真価を発揮するまでに弾き込めるわけではないことをあらためて自覚し、ピーク時には二桁台数あった楽器の整理進めてきた。
中出敏彦、西野春平、中山修などはすでに数年前に放出、その後英国のデイヴィッド・ホワイトマンの楽器をハウザーモデルとオリジナルモデルの2台を入手。他に19世紀ギターのオリジナルも何本か手に入れた。かつての憧れだったハウザーも2年前に入手。その後も古いスパニッシュの味わいを求めて、事あるごとに試奏も重ねてきた。そんな中、ここにきて新たな出会いがあって、これまでの手持ち5本を一気に手放し、替わってあらたに、ゲルハルト・オルディゲスとサイモン・マーティーの2本を手にした。現在の手持ちは以下の通り。

 ヘルマン・ハウザー3世 2006年
 ホセ・ラミレス3世 1978年
 田邊雅啓 2004年
 ゲルハルト・オルディゲス 2008年
 サイモン・マーティー 2006年
 英チャペル社 1860年代

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チャペル社の19世紀オリジナルとラミレス以外は2000年以降の新しい楽器ということになったが、いずれもそれぞれに味わい深い音で、手にするごとにその音に魅了される。
ハウザー3世は「今更?」の前評判に反して、基本に忠実でしっかりした音と作りに感心。いつ弾いても低音・高音とも太くよく通る雑味のない音で、曲の時代性に関わらず、モダンギターとしての万能性を発揮する。近代ギター製作の保守本流をいく趣きがあるし、1世以来、様々なトライアルは継続していると思うが、商品としては妙なラインアップやバリエーションを安易に作らないのも好感がもてる。
ラミレス3世は70年代後半ラミレス工房最盛期のもの。すでに製作者の名を表すスタンプは廃止された時期のものだが、ぼくの個体は内部に残された痕跡からマヌエル・カセレス作のものと思われる。ラミレスは音の分離が悪いと言われることがあるが、おそらくハウザーあたりとの比較の問題で、よくある国産の楽器よりずっと明瞭で和音の調和・分離とも問題はないし、音もよく通る。そして何より高音の甘くたっぷりとした響きが魅力だ。
田邊ギターも完成から10年になった。低いウルフを伴ったたっぷりとした低音と、すっきりした高音で、手元の音量感以上に音はよく通る。工作精度や材料の扱いも完璧で、10年間弦は張ったままだが、ネックはまったく反りもなく指板・フレットともに、これ以上ない程の精度を維持している。
G・オルディゲスとS・マーティーの2本は今年後半に出会って手に入れた。オルディゲスのハウザー1世モデルは、田邊ギターに華やかさと艶っぽさを加えたような音作り。高音はよく延びて歌うし、低音はふっくらとしたボリュームとよく通るエネルギーを併せ持つ感じだ。楽器店で試奏し5分としないうちに即決。今のところ死角が見当たらないほど惚れこんでいる。
S・マーティーは、後述するチェロとのアンサンブル用に音量感のある楽器を物色する中で行き着いた楽器だ。実は3年程前に一度オファーがあったが、そのときは音量を求める状況でもなくパスしていた。昨今、音量優先の楽器はいくつかの選択肢があるが、今回のS・マーティーは、音量感・エネルギー感と、オーソドクスなギターの音色感を併せ持っている点が気に入った。
19世紀ギターはチャペル社製のオリジナル1台だけを残し、他のオリジナル、レプリカ共に手放した。19世紀ギターも仏系・独墺系・伊系と、それぞれに歴史経緯と音色感を持っていて魅力を感じるが、これ以上それらに関わるには、ぼくの素養が不足しているし、これからそれらを身に付けるのも難しいだろうなあと判断した。


◇アンサンブル◇
楽器は弾いてナンボ。2011年からmixiの集まりに時々出向いて下手なソロを楽しんできたが、一方で以前から、ヴァイオリンやチェロ、フルートとのクラシカルなアンサンブルをやりたいという気持ちがあった。運よく昨年、チェロ弾き、フルート吹きのハイアマチュア2名と知り合い、ときどき合わせる機会を持つに至った。特にチェロの相方とは二ヶ月に一度のペースで遊ぶことができた。最初はピアソラ<タンゴの歴史>で遊びましょ、から始まり、8月にはジャズ・ボッサ(なんちゃってボッサ?!)を弾いてちょっとしたステージで本番デヴュー。年明けの2月には達者なチェロ弾き達の集まりに参加し、メンデルスゾーンの<無言歌>作品109で本番を予定している。ギターやマンドリンという以前から身近にあった楽器とのアンサンブルと違い、クラシカルな正統派楽器とのアンサンブルは実に楽しくもあり、勉強にもなる。

…というわけで、今年の述懐<六弦編>のあれこれ。楽器探しの放浪も一旦終息。アンサンブルの相手にも恵まれ、来年は弾くことに専念したいと思うが、さてどうなるか。 最後に、以前の記事にも貼った音源だが、今年楽しんだアンサンブルの音源をいくつか貼って備忘としよう。


メンデルスゾーン<無言歌>作品109(抜粋)


エルガー<夜の歌>(抜粋)


ジャズ・ボッサの名曲<ブルー・ボッサ>(抜粋)


モーツァルトのヴァイオリンソナタK.304を元曲にした、ピエール・ジャン・ポッロ(仏1750–1831)の三重奏曲。



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