聴き初めはマタチッチの<英雄>



寒風吹きすさぶ元旦から一夜明け、きょうは穏やかな日和となった。
年末年始も格別のことはないが、いつもはほとんど観ないテレビで少し前に録画しておいた<孤独のグルメ>をまとめて観た。テレビに登場してから3年ほど経つだろうか。いつもながら井之頭五郎のさりげないカッコよさにシビれてしまう。
さて、新年を迎えて最初の音出しは何にしようかと、腹を減らして店を見つくろう五郎のごとく、音盤棚の前でしばし熟考。よし、これでいこうと決め、この盤を取り出した。年の初めに相応しい晴々とした気分にもいいだろう。


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マタチッチとチェコフィルによる<英雄>。1959年3月プラハ・ルドルフフィヌム(芸術家の家)での録音。1899年生まれのマタッチがちょうど60歳のときのもの。スラヴオペラと来日して以来、日本でも知られる存在になる前の録音。手持ちの盤はコロンビアの廉価盤シリーズ:クレスト1000の1枚。かつてLP時代にも廉価盤で何度かリリースされていたが縁がなく、10年程前に同シリーズで再発された際に手に入れた。マタチッチとチェコフィルはこの頃から70年代にかけて、ブルックナー・チャイコフスキーなどいくつかの盤を残した。この盤もその中の一枚。録音も60年代後半のものに劣らず素晴らしくいい。ヒスノイズは皆無、オケの分離、低弦群の充実など文句なしの音質だ。

指揮者には晩年になってテンポが遅くなるタイプと若い頃と変らないタイプがいる。前者の代表はチェリビダッケやバーンスタイン、後者ではヴァントやこのマタチッチあたりだろうか。冒頭から音楽はよく流れ、第1楽章を15分06秒で通している。しかし性急さはない。快速調のセル&クリーヴランドが14分54秒だから、それとほとんど変らないことになるが、聴いている感じでは10秒の違い以上の落ち着いた運びに感じる。チェコフィルの弦がしなやかに歌い、木管はややひなびた音で応える。晩年のブルックナーのような剛直さや豪放さとはだいぶイメージが違う。時折り繰り出されるティンパンの強打や金管の咆哮に、マタチッチらしいやや古い時代の様式ともいうべき表現を聴いて、ニヤリとしてしまう。第2楽章もチェコフィルの弦楽群が素晴らしい響きを聴かせる。ゆったりとした構えの歌いっぷりで、音の起伏も大きなフレージングでとらえている。聴かせどころのフーガのスケールも申し分ない。第3、4楽章は意外にも軽快ささえ感じる。そう思いながらあらためて第4楽章を聴くと、元々この楽章は中々チャーミングな響きで作られているなあと合点した。リズムの妙、時折り響く素朴な木管の歌、しみじみとした弦に響き…主題のオリジンがバレエ音楽「プロメテウスの創造物」であることから考えても、この楽章は明るく未来的であって不思議ではないのだなあと。まさに新年の初めて聴くに相応しい曲かもしれないと、新年早々、選曲の妙に自画自賛。聴き飽きたと思っていた<英雄>だが、やはり名曲でありました。


今どき珍しい重厚長大型をいくティーレマン&VPOの<英雄>。第1楽章提示部を繰り返しているとはいえ、トータル57分超の演奏時間は最長の部類か。終楽章50分59秒の長いGPにもビックリ!。そのあとも独自の表現が続く。



マタチッチ最後の来日時。N響との第7番終楽章。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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