ビゼー交響曲ハ長調



きょうは仕事を休み、終日在宅。昨日の遠出疲れも少々あってグータラ安息日。まあ、いつもグータラだけど…。夕方近くになって、ちょいとひと息。先日来のアンセルメ盤の検分。きょうは本命フランス編にしようと、この盤を取り出した。


201708_Bizet.jpg 201708_Ansermet_CD19.jpg


ジョルジュ・ビゼー(1838-1875)の交響曲ハ長調。フランス音楽集全32枚のボックス中Disk19に収められている。収録曲は以下の通り。1960年5月録音。

Disc19
・ビゼー:交響曲ハ長調
・ビゼー:子供の遊び Op.22
・ビゼー:『美しきパースの娘』組曲
・オッフェンバック:序曲『天国と地獄』
・オッフェンバック:序曲『美しきエレーヌ』
・エロルド:序曲『ザンパ』

オペラや劇音楽で有名なビゼー。交響曲は三曲書いたとされるが、現存して演奏されるのは、もっぱらこのハ長調の交響曲。ビゼー17歳のときの習作ということだが、初演はビゼー没後60年近く経った1930年。意外にもあのワインガルトナー指揮で行われたそうだ。

作曲年は1855年ということなので、時代としてはロマン派も中期から後期にかかろうかという時期。しかし、この曲の作風は17歳の習作ということもあってか、形式はしっかり古典様式にのっとり、和声や曲想も初期ロマン派風。メンデルスゾーンの雰囲気を感じるところもある。冒頭第1楽章は序奏なしの溌剌としてリズミカルな主題が立ち上がり、弦の刻む推進力にのって生き生きと進む。副主題では好対照にオーボエが伸びやかに歌う。第2楽章はイ短調に転じる。弦楽群のピチカートにのってソロをとるオーボエが印象的だ。中盤にはフーガも挿入されている。第3楽章のスケルツォも型通りながら、堂々かつ伸びやかな曲想。終楽章は単純なロンドではなく、立派なソナタ形式をとり、無窮動風の弦楽による第1主題に続き、その後も弦と管いずれもが生き生きとしたフレーズを交錯させ、飽きさせない。

アンセルメ&OSRのこの盤は、これまで聴いたこのコンビの録音に中でも印象的な一枚。ベートーヴェン、ブラームス等とはまったく違う響きで驚いた。ドイツではみられなかったディナーミクの細かなコントロールが絶妙。やや薄めの弦楽群のテクスチャもむしろ奏功し、シルキータッチの旋律を奏でて実に美しい。録音もドイツ物では程々だった奥行き方向の広がりが豊かになり、木管群がステージ後方から響く。アンセルメ&OSRの真骨頂はフランス物の中でもラベルやドビュッシーなど近代作品だろうが、この曲やこの盤に収録されている明快でメロディアスなフランス物でもいい味で聴かせていて、申し分がない。


スコア付き音源。ぼくら素人でも追いやすいシンプルかつ美しいスコア。


トルコのビルケント大学が1993年に設立したというプロフェッショナルオケによる全曲。
第2楽章11:00~第3楽章21:30~第4楽章27:15~



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

シゲティのバッハ無伴奏



世間はお盆休みにかかる日曜日。ちょっと車で遠出。一日ぶらぶらして夕方過ぎに帰宅した。出かけた先の手土産で簡単な夕飯を済ませて一服。ひと息ついてアンプの灯を入れ、先日のクイケンの続きでこんな盤を取り出した。


201708_szigeti.jpg 201708_szigeti_JSB.jpg


ハンガリー生まれの往年のヴァイオリニスト:ヨーゼフ・シゲテイ(1892-1973)によるバッハ無伴奏ヴァイオリンのための作品集。手持ちの盤は70年代後半に廉価盤LPで出ていたときのもの。当時この盤を選んだ理由は簡単。その頃廉価盤で手に入る唯一の全曲盤だったからだ。しかし、今となってはそうした現実的な理由を除いても、この盤を選んでおいてよかったと思うことしきりだ。

ぼくはもちろんシゲティの全盛期をリアルタイムで見聞きした世代ではない。そのためか、シゲティはコンサートプレイヤーとしてよりは、後半生の指導者としての実績の方が記憶に残っている。特に日本人の潮田益子や前橋汀子が、シゲティに師事していたことも、そういう印象につながっているのかもしれない。このバッハの無伴奏はそんなシゲティが還暦を過ぎ、晩年に差し掛かる少し前の録音といっていいだろうか。録音は1959~1960年。すでに録音システムはステレオ録音への移行を完了している時期だが、この録音はモノラルで録られている。

BWV1001に針を降ろす。モノラル録音独特の浸透力のある音が深く響き渡る。録音状態はすこぶるいい。ゆったりとしたテンポと深いボウイング。一音一音確かめるかのように弾き進める。流麗、華麗、そういう言葉の対極にある演奏だ。往時のシゲティは新即物主義=ノイエザハリッシュカイト(懐かしい言葉!)な演奏スタイルとされていたが、今こうして現代的視点で聴くと、十分にロマンティックで、濃い口の音色と歌いっぷりだ。時おり音が揺れたり、音程に不安定なところがあるのは、この当時すでに指摘されていた技巧の衰えゆえだろうか。しかし、ロマン派のヴィルティオーゾの曲ではないし、それが曲を聴く上での妨げになる感じはない。モノラル録音もこうした音数の少ない独奏曲などでは、ステレオ録音に比してさしたるディメリットを感じない。

話は飛ぶが…
例えばNHKラジオのニュースをAMとFMとで切替えて、聴き比べてみると面白い。話し手も内容も同じでありながら、ニュースの読み上げに関しては確実にAMの方が聴きやすく、内容が把握しやすい。特に外部ノイズの多い車で走行中にカーステレオで切替えてみると-聴瞭然だ。AMの再生周波数帯域は狭く、振幅も圧縮されている。FMに比べ忠実度は劣るが、話を伝えるという機能としてはむしろ優れている。音楽と肉声とを単純に比較できないが、古いモノラル録音やAMラジオから流れる音楽に時として浸透力や説得力を感じることにも一脈通じる。忠実度は低いがゆえに、音そのものより、音楽の成り立ち、音楽が伝えようとしている核心といったものに耳を傾けざるを得ないこともあるだろう。古い蓄音機で聴くSP盤にこそ音楽のリアリズムを感じると主張する人がいるのもうなづける。このシゲティのバッハなどは、そうした主張の論拠といってもいい録音だ。そしてその真髄を聴き取るには最新のオーディオ装置でなく、少なくても60年代までのシステム、すなわち効率の高い軽量コーンのスピーカーを大型の箱に入れ、帯域を欲張らないトランス結合のアンプを使い…と、そんなシステムを使いたくなる。あるいは、古い木製キャビネットのラジオを用意し、当時標準的に付いていた裏面のPU端子に圧電型ピックアップのプレイヤーをつないで聴く…。もっとも、今どきそんな酔狂なことを実現するのは、流行りのハイレゾ導入よりずっと手がかかるだろうが…。ちょっと古いシゲティの録音を聴いていると、ふとそんなノスタルジックなシステムで聴きたくなる。


この盤とほぼ同時期リリースのLP盤音源。BWV1001。リュート曲としてのBWV1000のフーガは5分26秒過ぎから。 冒頭少し間があって18秒過ぎから演奏が始まる。


終曲にシャコンヌを含むパルティータ第2番ニ短調。 こちらも同様、冒頭少し間がある。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

カリン・シャープ(G)



先日の記事に書いたアナベル・モンテシノス。彼女のCDと一緒に知人U氏からお借りした盤がもう一枚あった。…U氏、どうみてもジャケ買いだな(^^;


DSCN6099 (560x560) 201708_Karin_Schaupp.jpg


ドイツ生まれで現在オーストラリア在住のカリン・シャープ(1973-)のギター。独白(Soliloquy)と題された盤。彼女のデビュー盤にあたる。1995年に録音され2002年にリリースされている。収録曲は以下の通り。

1. 深想(バリオス)
2. ワルツ第3番(作品8より)(バリオス)
3. ワルツ第4番(作品8より)(バリオス)
4. ソナタ(ホセ)
5. ステレ(記念碑)(ホートン)
6. 舞踏礼讃(ブローウェル)
7. ギターのための4つの気晴らし(ブラカニン)
8. ダンサ・ブラシレーラ(ブラジル舞曲)(モレル)

このブログではもっともらしくギター弾きを自認して与太記事を書いているが、ぼくは昨今のギター事情にはまったく疎い。今をときめく人気ギタリストについてもまったく不案内。カリン・シャープも今回この盤で初めて聴いた。1995年の録音からすでに20年余が経っていること、またこのデビュー盤のあともコンスタントにアルバムをリリースしていることから、すでに中堅奏者という位置付けになるだろう。彼女はドイツで生まれ、5歳で母親の手ほどきでギターを弾き始めたそうだ。8歳のときオーストラリアに移り住み、10代でいくつかの国際コンクールで入賞して世界的なキャリアが始まったと、この盤のライナーノーツに記されている。この盤に収められている曲は、いずれもギターの特性を生かした技巧が盛り込まれているが、どれも高いレベルで難なく弾き切っていて、世界的にもトップレベルの一人であることがすぐに分かる。

収録曲のうち、19世紀的手法で書かれているバリオス作品をのぞくと、いずれも20世紀の音楽。ブローウェルは前衛的要素を含むが、それ以外は調性感もしっかりしたモダンな和声と、ギター特有の技法を盛り込んだ佳曲が並んでいる。モーリス・ラヴェルに賞賛されながら、スペイン内乱で短い命を終えたアントニオ・ホセ(1902-1936)のソナタはレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサが1934年に第1楽章のみ初演を行ったものの、その後忘れた存在だったが、1990年に楽譜が出版された。このカリン・シャープの録音がこのソナタの世界初録音だと、何かで読んだ記憶がある。曲の規模、内容からしても、20世紀のギターソナタとして定着しつつある曲の一つだ。イリーナ・クリコヴァも2009年録音のナクソス盤でこのソナタを録音している。ホールトン、ブラニカンという二人のオーストラリア人作曲家の作品は、いずれもこの盤で初めて聴いた。このアルバムに付された「独白」というタイトルをそのまま音にしたような作品。ともに4つ楽章から構成され、それぞれが異なる心象風景を語るような作品。調性感は強く聴きやすい佳曲だ。

この盤を聴き、そしていくつか見たYOUTUBE音源から、彼女の技巧レベルが極めて高いことが分かる。この盤でも、高速パッセージ・ポジション移動・トレモロ等、いずれもまったく不安を感じさせない。優秀な録音がとらえたその音も、いかにも現代的なクリアーでキレがあり、また低音から高音まで豊かな響きに包まれ、申し分がない。ライナーノーツによれば使用楽器はサイモン・マーティーの1995年作とのこと。偶然だが、イリーナ・クリコヴァそして先日記事に書いたアナベル・モンテシナスも同じサイモン・マーティーの楽器を使っていて、90年代終わりから現代までサイモン・マーティーの楽器はプロ奏者御用達の一つとして定着している感がある。もっとも、たまたま見たカリン・シャープの動画によると、最近になってアナ・ヴィドヴィッチと同じジム・レッドゲートに変えたようだ。


アルベニス<アストリアス> 音を聴く限り、何箇所か編集カットされているようだ。


歌伴も


カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲


アントニオ・ホセのソナタ



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

アンセルメのブラームス



きょうは昨日ほどではない程々の暑さながら湿度高く、仕事の帰途、いつも以上の疲労感でなんだかヘロヘロ。帰宅後、ぬるめの湯につかってようやくひと息ついた。幸い明日から三連休。少々散らかっていた部屋の片付けをしたところで音盤タイム。引き続きアンセルメ&OSR盤の検分。


DSCN6091 (560x560) DSCN6087 (560x560)


本命フランス編・ロシア編も気になるが、今夜もまた<その他欧州編>のボックスを開けた。先日の記事でベートーヴェンの第1・第3について書いたが、すでにベートーヴェンは半分ほど聴き終えた。さて、次には何を…と考え、独墺系の山をひと通り見渡そうかと、ブラームスを聴くことにした。このセットに収められているブラームスは以下の4枚。

Disc10
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68
ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 Op.90
Disc11
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 Op.73
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
ブラームス:悲劇的序曲 Op.81
Disc12
ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98
ブラームス:大学祝典序曲 Op.80
ブラームス:悲歌 Op.82
ブラームス:アルト・ラプソディ Op.53
 ヘレン・ワッツ(コントラルト)
 スイス・ロマンド放送合唱団・ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団
Disc13
ブラームス:ドイツ・レクィエム Op.45
 アグネス・ギーベル(ソプラノ)
 ヘルマン・プライ(バリトン)
 スイス・ロマンド放送合唱団・ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団

交響曲・序曲は1963年9月、声楽入りの3曲は1965年10月の録音。今夜はこのうちDisk10をプレイヤーにセットした。

アンセルメ&スイスロマンド管というと必ず引き合いに出されるのが、このコンビ唯一の来日となった1968年の公演。それまでレコードでその素晴らしい音楽に触れていた愛好家が、実際のコンサートで聴いたこのコンビにいささかがっかりしとという逸話だ。いわく、あれは録音マジックだったのか、いわく、学生オケ並み…ある音楽評論がそんなネガティブな論評をしたとされ、今日まで言い伝えられている。また、彼らの本命はフランス・ロシアの色彩的な管弦楽曲であり、独墺系の曲には相応しくないとの声も、その後長く続いた。一方で90年代になってこのコンビのベートーヴェンやブラームスがCDリリースされた際、予想以上の関心を集め、実際のセールスも好調だったと、ものの本に記されている。もっとも、ここでまたこんな話を書くから、また引き継がれるのかもしれないが…

あまり愉快ではないそんな話を思い起こしながらのブラームス第1…
ラックスマンL-570のボリュームノブを11時頃に合わせ、CDプレイヤーD-500のプレイボタンを押す。冒頭のトゥッティに身構えていると、予想を上回る量感のオケサウンドが押し寄せて、思わず声を上げそうになった。テンポは中庸ないしやや遅め。ほとんど緩急を付けずにインテンポで進む序奏。これまで聴いたベートーヴェンより幾分くすんだ響きで、おそらく管楽群の響きを抑え気味にコントロールしているのだろう。それにしても量感豊かで堂々した開始に驚いた。主部に入っても、テンポをほとんど動かさない。強弱のディナーミクもあまり変化がない(そもそも、この曲のスコアをみると、慣習的演奏のテンポやディナーミクを変えている箇所で、実際は楽譜に何の指示もないことが多い)。 そして、ところどころでソロをとる木管群がややひなびた音で響く。へートーヴェンやハイドンでは、パッと飛びぬけるようなソロの音色だったものが、このブラームスでは明らかに異なる。

総じて、演出臭さがまったくなく、練習初日、ひとまず通してみようか、というときの感じに近い。もちろんアンセルメの指示や注文があり、リハーサルを経てのセッション録音だと思うが、それほどガチガチに細部まで決め、周到にチェックをし、という演奏には思えない。録音の日付まで確認できないのだが、おらそらく英デッカの注文もあって、せっせと録音を重ねていた頃のこのコンビの姿を反映しているように感じる。それをもって、細部の詰めの甘さ(細部のアンサンブルや木管群の音程など)を指摘することも出来るだろうが、それより、このコンビの素の姿がそのまま出た、のびのびした曲の運びを良しとしたい。第2楽章は弦楽群がよく歌うが、抑制が効いていて持ち味の明るさと軽快さがアダにならないよう配慮しているかのようだ。第3楽章もよくある演奏にように速めのテンポでせわしなく動くことなく牧歌的。終楽章はそれまでの楽章と少し異なり、テンポ・ディナーミクともに動きが見られる。弦楽群も木管やホルンも音に明るさを増してのびのびと歌い、堂々としたコーダに向かって勝利を謳歌する。

数学者だったアンセルメ。音楽への思い断ち難く、指揮者に転じるべく助言を求めたのはベルリンのニキシュとワインガルトナー。最初のコンサートはベートーヴェンプロ。アンセルメ=フランス物という図式はいささか作られたイメージの側面も否定できない。


この盤の音源。交響曲第1番ハ短調の全曲。


同。悲劇的序曲。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

クイケンのバッハ無伴奏



関東地方は予報通りの猛暑日。東京都内では37℃超え。それでも湿度が低かったからか、ジメジメした暑さではなかったのが救いだった。あすは気温少々下がるも湿度上昇とのこと。あさっては休日につき、もう一日何とか乗り切ろうか…。さて、そんな呑気な天気話をつぶやきながら、一日終えて一服。ちょっと必要あって、こんな盤を取り出した。


201708_Kuijken.jpg 201708_Kuijken_JSB.jpg


シギスヴァルト・クイケン(1944-)の弾くバッハの無伴奏バイオリンの作品集。ソナタとパルティータの計6曲が収録された盤。1999~2000年の録音。十年ほど前にちょっとしたいきさつがあって、ある古楽リコーダー奏者からいただいた。 説明をするまでもないだろうが、シギスヴァルト・クイケンは有名なクイケン三兄弟の真ん中。三兄弟は揃って古楽分野で活躍している。ぼくは古楽ファンでもピリオド指向でもないので、彼の盤はこれが唯一手元にあるだけだ。にもかかわらず、バッハの無伴奏を聴くとき、他のいくつかの盤よりもこの盤を手にすることが断然多い。

この盤、まず録音が素晴らしくいい。さすがは伝統を誇るDHM独ハルモニアムンディ。透明感にあふれ、ヴァイオリンの音だけでなく周りの空気までも澄み切っているように感じる。ナチュラルなエコーも十分効いていながら細部もあいまいにならずよく聴こえる。ピリオドスタイルというと門外漢のぼくなどはやや過激な表現やモダンとかけ離れた奏法と音響をイメージするが、このクイケンの演奏はそうした違和感がない。ライナーノーツによれば使用楽器はジヴァンニ・グラツィーノ作。弓も当時のオリジナルとある。さきほどからソナタ第3番ハ長調BWV1005が流れているが、第2楽章フーガのテンポは落ち着いているし、続く第3楽章のラルゴも急がずもたれずで実に好ましく美しい。そして、こうして久々にバッハ無伴奏ヴァイオリンをこの演奏で聴くと、まさに心洗われる思いに至る。


この盤の音源でBWV1005のラルゴ。あまたあるバッハの曲の中でも最も美しい旋律の一つだろう。


パルティータ第2番ニ短調。CDに比べると、少しくすんだような音調。おそらく実際の音はこちらに近いのかもしれない。


クイケンはヴィオラ・ダ・スッパラ(ヴィオラポンポーザ)も器用にこなす。チェロ組曲第1番のプレリュード。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

アンセルメのパリ・セット



台風一過で夏空広がる関東地方。梅雨明け以降、はっきりしない天気が続いていたが、少々遅れて夏本番到来。明日の予報は久々の猛暑日。まあ、でも程々に願いたい。さて、先週届いたアンセルメボックス。本命のフランス音楽集・ロシア音楽集を差し置いて、もっぱらその他欧州編<The Great European Tradition>を引き続き検分中。今夜はその中からこの盤を取り出した。


DSCN6083 (560x560) victoria_Hall.jpg


ハイドンの交響曲を中心にした3枚。収録曲は以下の通り。
Disc15
ハイドン:交響曲第82番ハ長調『熊』
ハイドン:交響曲第83番ト短調『雌鶏』
ハイドン:交響曲第84番変ホ長調
Disc16
ハイドン:交響曲第85番変ロ長調『王妃』
ハイドン:交響曲第86番ニ長調
ハイドン:交響曲第87番イ長調
Disc17
ハイドン:交響曲第22番変ホ長調『哲学者』
ハイドン:交響曲第90番ハ長調
ハイドン:トランペット協奏曲変ホ長調 Hob.VIIe-1
 パオロ・ロンジノッティ(トランペット)
フンメル:トランペット協奏曲変ホ長調
 ミシェル・クヴィット(トランペット)

いわゆるパリ・セットと称される第82番から87番の交響曲が並ぶ。のちの傑作ロンドン・セット(ザロモン・セット)に比べると、幾分小規模ではあるが、いずれもハイドンの熟練の技が光り、標題が付された第82番ハ長調「熊」と第84番ト短調「めんどり」を含め、聴き応えのある曲が並ぶ。1957~1968年、いずれもスイスロマンド管本拠地ジュネーヴ・ヴィクトリアホール(写真右)でのセッション録音(交響曲は1965年)。きょうはこのうちDisk15をプレイヤーにセットした。

アンセルメのハイドン?…と色眼鏡で見る向きもあるかもしれないが、どっこい、これが立派なハイドン。スイスロマンドの明るく聞達な弦楽群と個性際立つ管楽群、60年代に入りステレオ収録技術に一段と磨きのかかった英デッカの録音。そしてそうした素材を素直かつ堂々と引っ張るアンセルメの棒。期待をはるかに上回る快演だ。
第82番「熊」は第1楽章冒頭から量感豊かに響く弦楽群と、その合間をぬって楚々としたフレーズを奏でる木管群とが、曲に明快なコントラスト与える。堂々としているが大げさにならず、チャーミングな表情もあって音楽が単調にならない。この演奏のあと、定評のある大指揮者と名門オケの演奏を聴いたが、すべてが曖昧模糊とし、早々にストップボタンと押してしまった。第2楽章もAllegrettoの指示通り。歌い過ぎず、もたれることなく進む。第3楽章のメヌエットは恰幅のいいグランドスタイル。続く第4楽章とのコントラストも明快となる。序奏なしの劇的なト短調フレーズで始まる第83番「めんどり」もハイドン交響曲の傑作の一つだろう。ここでもスイスロマンドの明快な響きが際立つ。また他の曲同様、弦楽群と管楽群とのコントラストが際立っていて、ハイドンはこれほど色彩的であったかと、感じ入ってしまうほどだ。

近年ハイドンの交響曲は人気で、その理由はピリオドスタイルによる復興という側面もあるだろうが、それ以上にやはり曲自体がいいからだろう。100曲以上を数える曲のいずれもが職人的な技法でそつなく書かれている。ぼく自身の嗜好もあるだろうが、モーツァルトの初期交響曲はほとんど聴くことがなくても、ハイドンはいずれも捨て難い。アンセルメのハイドンは今回のボックスセット以外に単独でも出ている様子。ロンドン・セットのあとに何かハイドンを聴こうかと考えている輩には、パリ・セットを、そしてアンセルメ盤をファーストチョイスとして推してもよいかなと思う。


この盤の音源で第82番ハ長調「熊」


第83番ト短調「めんどり」の第1楽章展開部の途中まで。LP音源。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

アナベル・モンテシノス(G)



昨年秋に拙宅へ遊びに来てくれた知人U氏が、「与太さん、これ聴いてみてよ。」とCDを貸してくれた。


201708_Anabel_Montesinos.jpg DSCN6076 (560x560)


スペイン出身で現在オーストリー在住のアナベル・モンテシノス(1984-)のギター。2011年録音のナクソス盤。ナクソスはかねてより若手ギタリストの録音に積極的で、国際コンクールで優勝した奏者へのインセンティブという形でCDを製作し、新人実力派の発掘に尽力している。アナベル・モンテシノスは2002年タレガ国際コンクール、2010年ミケーレ・ピッタルーガ(アレキサンドリア)国際ギターコンクールで優勝、それを受けて最初のアルバムを2003年に、そして今回の録音と、共にナクソスからリリースしている。YOUTUBEでは以前から彼女の演奏に接していたが、きちんとCDで聴くのは今回初めて。二作目のこの盤の収録曲は以下の通り。

グラナドス~モンテシノス:詩的なワルツ集、ゴヤのマハ
ファリャ~ベーレント:代官の踊り
リョベート:クリスマスの夜、盗賊の歌、聖母の御子
ロドリーゴ:スペイン風の3つの小品(ファンダンゴ、パッサカリア、ザパテアード)
キローガ~トレパト:タトゥー、おおマリア、緑の瞳
ソル:魔笛の主題による変奏曲Op.9
プホール:トナディーリャ、タンゴ、グアヒーラ

王道のスペイン物が並ぶ選曲。中ではキローガの作品が少し珍しい。ソルを除きいずれもスペイン近代の作品ではあるが、曲想は19世紀ロマン派プラス20世紀のスパイス少々。唯一古典期作品のソルが少々違和感がないでもないが、古典の解釈も聴けるという意味では悪くない選曲だ。

国際コンクール優勝者らしい切れのいい技巧とブリリアントな音。スピーカで聴いていると、サイモン・マーティー製ギターの特性もあってか、ふと二重奏かと錯覚するほど響きが豊かだ。表現としてはかなりロマンティックで、テンポ・音色とも積極的に変化させている。古典期での作品でこれをやられると鼻に付くところだが、ことスペイン物をモダン楽器で弾くということであれば十分納得の解釈。技巧に難があると、そうした解釈が<ごまかし>に聴こえることもあるが、その点はさすがに不安はない。 スペイン物らしいキャッチーなメロディーとリズム、わずかに効いた近代的な和声のスパイス。高い技巧と豊かな響き。モダンクラシックギターの今を聴くには好適のアルバムだ。


この盤の冒頭に入っているグラナドスの詩的ワルツ。おそらくこの盤の録音セッションでの光景。


同。ファリャの三角帽子から<代官(市長>の踊り>。ジークフリート・ベーレントの版を使用。


ビジュアルも一級のラテン美女だ。


アナベル同様ミケーレ・ピッタルーガ優勝者で夫君のマルコ・タマヨと。
う~ん、仲良すぎるゾォ~!(^^;



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)